名古屋の街路樹【西区・区中央北寄りを東西に走る市道を彩るキンモクセイ】名古屋市西区

かつて、市街地の急速な発展によって「白い街」とも呼ばれた名古屋ですが、道路整備に合わせて街路樹の植栽に注力し、今では、市域における街路樹密度が全国の大都市でトップクラスにまでなりました。
2021年からは、街路樹の大木化や老朽化といった課題を解決し整備を進める「街路樹再生なごやプラン」も始まり、道路空間と調和した街路樹づくりが進められています。
「名古屋の街路樹」では、名古屋市内の、街路樹と街並みが調和した特徴的な風景を取り上げ、その魅力をご紹介していきます。

西区北部を横断する市道・上小田井第3号線のキンモクセイが植栽されている範囲(南側の歩道)=オレンジ色の点線部分
目次

散策が楽しい、芳香漂う歩道

特徴的な樹や花、葉の形状、紅葉(黄葉)の仕方など、街路樹の樹種を推定する手段はいろいろありますが、独特な香りで認識できる木の代表格がキンモクセイです。
日本では三香木(ジンチョウゲ、クチナシ、キンモクセイ)の一つに数えられていますが、中でもキンモクセイは芳香が強く、少し離れたところからでも、独特な甘い香りでその存在が伝わるほどです。

中国原産のキンモクセイは、モクセイ科の常緑小高木で、雌雄異株。
花付きの良い雄株だけが江戸時代に渡来したと伝わっています(国内ではほぼ挿し木によって増やされているため、実がならないとされています)。

開花期は9月中旬〜10月中旬で、夏の暑さが厳しい年ほど開花期は遅くなるとされ、猛暑だった今年は、例年より少し開花が遅かったようです。
一つひとつの花が咲く期間は1週間程度とのことなので、香り始めたと思ったら、あっという間に開花期が終わってしまう印象です。

※本記事中の写真は全て2025年10月13日に撮影したものです。

キンモクセイ並木の西端から西方面を見たところ

丸みのある形にせん定されたキンモクセイの木越しに、名鉄犬山線の赤い電車が走っていくのが見えました。
深緑色の葉っぱの合間にチラチラと見えるオレンジ色の小さな点々が花です。
気をつけて見ないと、見過ごしてしまいそうなほど慎ましやかですね。

キンモクセイ並木の東端から西方面を見たところ(南側レーン)

丸っこいフォルムのキンモクセイが整然と並んでいます。
足元の植え込みはユキヤナギなので、春には真っ白な点描が続く道となります。

キンモクセイ並木の東端から西方面を見たところ(北側レーン)

市道・上小田井第3号線の南側の歩道にはレーンが3筋あり(北側の歩道は1筋のみ)、両端が歩道、真ん中はキンモクセイとユキヤナギの並木になっています。
約200メートルの距離に20本のキンモクセイが植えられており、行きに南側レーン、帰りは北側レーンを通ると、両側からキンモクセイ並木を堪能できます。

キンモクセイの木に少し近づいたところ

キンモクセイの花は一つひとつがとても小さく、このくらいまで近づかないと花の姿を確認することは難しいです。
この並木は高さ2〜3メートルぐらいでそろえられているため、歩道から花の観察をするのにちょうどいい高さです。

下から見上げたキンモクセイの枝

少し高いですが(といってもこの枝は推定で1.7メートルぐらいの位置)、こんなにたくさん花が固まって咲いているところもありました。
日当たりも良く、開花条件がいいのでしょう。

深く4裂した花冠を持つ
可愛らしい花をクローズアップ

キンモクセイの花のアップ

キンモクセイの花は葉腋(ようえき=葉の付け根)に集まって咲きます。
深く4裂し、少し厚みのある花冠は、小さいながらも存在感があります。
原産国の中国では、花を集めて乾燥させ生薬として活用されているそうで、お酒に漬けたり(桂花陳酒)、お茶に混ぜたりして(桂花茶)、飲まれているそうです。

大人の女性の小指とキンモクセイの花

具体的にどれくらい小さいのかというと、花の直径は5ミリほど。
大人の女性の小指の爪と比べても、ご覧の通りです。
そのままネイルアートにできそうなほど、可れんな花姿ですね。

キンモクセイの花のつぼみ

葉腋から花芽が出ているのがよく分かります。
キンモクセイのつぼみは初めて見ました。
間近で観察できる環境ならではの光景です。

咲きかけのキンモクセイの花

まだ開ききっていないキンモクセイの花。
少し色が濃く、凝縮した質感が、ドライフルーツのようにも見えます。

この道は、東の先に中浦公園、西の先に名鉄犬山線の高架があり、とても雰囲気の良い散策路だなあという感想を持ちました。
大人も子どもも間近でじっくりと花を観察できる点も、魅力です。
甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで、満ち足りた気分で帰路につきました。

※掲載情報は公開日時点のものとなります

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この記事を書いた人

名古屋生まれ、名古屋育ち。
季節の移り変わりを観察するのが大好きなアラフィフ世代。新聞記事制作や、出版社にてガイド本等の制作経験あり。
現在は、旅や町ネタに関する記事を執筆しています。観光や販促のお手伝いも。

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