まず自分を慈しむことから 女性の健康とエンパワーメント向上を目指して  森田 敦子さん

企画・制作/中日新聞メディアビジネス局

 愛知県豊橋市出身の森田敦子さんは、全日本空輸勤務時代に自己免疫疾患を患ったことをきっかけに、フィトテラピー(植物療法)を学びました。帰国後は、女性のヘルスリテラシー向上と心身のケアを訴え続け、現在は日本女性財団の理事として、全国の女性医師による医療を受けられない女性たちの支援にも取り組んでいます。国際女性デーを前に、森田さんにお話を伺いました。

森田 敦子さん

日本女性財団 理事  森田 敦子さん

◇ユネスコで痛感した日本女性のヘルスリテラシーの遅れ

全日本空輸を退職してフランス・パリ十三大学に留学しました。在職中に自己免疫疾患を発症し、植物療法(フィトテラピー)で回復した経験が出発点です。現地の医薬学部で学ぶ中で痛感したのが、日本とヨーロッパの意識差でした。フランスでは女性が当たり前に働き、職場では月経痛がないかを気遣う上司がいることも普通です。日本とのギャップに、この国の女性のエンパワーメントを高めるサポートに一生を捧げようと決意しました。

帰国後の2013年と2015年、ユネスコ本部(パリ)で開催された国際女性デーのシンポジウムに日本代表のひとりとして登壇しました。他国の参加者が自国の性教育や女性医療の整備状況を具体的なデータで示す中、日本のメディアは数名しか来ておらず、ヘルスリテラシー(健康情報を正しく理解し活用する力)という概念も国内ではほとんど知られていませんでした。

これまで、月経痛やPMS(月経前症候群)、更年期症状を抱えたまま職場で笑顔を作り続ける女性を数多く見てきました。内閣府の調査では、日本の女性管理職比率はわずか13・ 2%で欧米と比べて著しく低い水準にあります。厚生労働省によると女性の労働力率は55・6%まで上昇していますが、その内実は健康課題を我慢しながら働く女性の実態を反映していません。不妊治療に行く時間を確保できないまま妊娠可能な時期を過ぎてしまうケースも後を絶たず、これが少子化の一因にもなっています。

東海地方で若い女性の転出超過が進んでいる背景には、産業構造の歴史もあります。戦前の繊維工業から発展した機械技術が自動車産業等へ受け継がれ、経済を発展させる礎となりました。そうした環境によって、子育てや家事、介護までが女性の役割として固定化されたといえます。

◇全国200名超の女性医師が支える草の根の医療支援

今、私が理事を務める日本女性財団は、理事長に婦人科医である対馬ルリ子氏がリードしており、「すべての女性が健康で生きやすく活躍できる社会」の実現を掲げ、三つの柱で活動しています。①女性の健康実態の調査・把握、②医療支援の拡充、③政府への政策提言です。理事・スタッフは全員無報酬のボランティアで、企業や個人から集めた寄付金は運営費ではなく、全額を女性の医療支援および活動に分配します。

支援の核となるのが「フェムシップドクター」の活動です。婦人科・泌尿器科を中心に全国200名以上の女性医師が参加し、経済的理由や心理的ハードルで受診できない女性を無料で診察・治療しています。対象は生理の貧困、月経困難症、子宮内膜症、婦人科がん、メンタルヘルスの不調など多岐にわたります。コロナ禍以降は特に若い世代の心身の健康悪化が顕著で、かかりつけ医を持たない10代・20代の女性への対応が急増しています。全国の女医が現場で実態を把握するため、支援と並行して政策提言のためのデータ収集も担っています。

私はファウンダーとして企業への寄付を呼びかけています。経営幹部に面会すると「フェムテックとは何か」という基本的な質問から始まることが大半です。そこで、女性社員の約八割が月経痛を経験し、不妊治療と仕事を掛け持ちしながら退職を検討した経験を持つ人も少なくないという現場の実態を示します。労働政策研究・研修機構は2040年に労働人口が約1200万人減少すると推計しており、女性が健康を維持したまま働き続けられる環境の整備は、企業の人材確保と生産性に直結する経営課題です。女性を役員に数合わせで登用するだけでなく、全女性社員が健康に働ける職場環境を整えることが本質だと伝えています。

日本女性財団は、すべての女性がその人らしく生き、安心して挑戦できる社会の実現を目指し、啓発活動、教育支援、政策提言などに取り組んでいます。国際女性デーが、世代や立場を超えて対話を深め、具体的な行動へとつながる契機となることを願っています。

森田 敦子(もりた あつこ)さん                                     フィトテラピスト。日本女性財団理事。ルボアフィトテラピースクール主宰。フェムケアブランド「アンティーム」を展開。著書多数。3月4日に新著『緑の薬箱』発売予定。


国際女性デー チャリティイベント

愛と希望の翼で世界を変える


高市早苗総理大臣よりお祝いメッセージが届いた当イベント。
当日は対馬医師の基調講演やトークセッションなど、
学び、体験できるチャリティイベントです。
2026年3月14日(土) TODAホール(東京)で開催

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