「1人じゃない」と思える社会へ。子育てマークに込めた思い  田村 麻生さん

企画・制作/中日新聞メディアビジネス局


「今日、誰とも大人と喋っていない」—— そんな一日を、毎日のように繰り返しているお父さんやお母さんが、今この瞬間も全国にいます。助けてほしいのに言葉にできない。声をかけたいのに踏み出せない。コロナ禍が変えた人間関係の希薄さを、なんとかしたいと立ち上がったのが、一般社団法人niko’co代表理事の田村麻生さんです。保育士資格を持ち、2児の母として自らも孤立した子育てを経験した田村さんは、2023年に個人事業主として活動を開始。2025年に法人化し、「孤立した子育てを無くす」「子育てに優しい世の中に」「頼れる社会をつくる」の三つを事業理念に掲げ、交流会や「子育てマーク」の普及を通じて、温かいつながりを生み出し続けています。

田村麻生さん

一般社団法人niko’co 代表理事 田村麻生さん


笑顔とつながりを。「niko’co」の誕生

「niko’co(ニココ)」の「ニコ」はお父さんやお母さんを笑顔にしたいという願いから。「co(コ)」には「心地よい温かさ」「コネクト(つながり)」「子育て」の三つの意味を重ねました。笑顔と温かいつながりで子育て家庭を包み込みたい――そんな思いが、この名前には凝縮されています。

私は愛知県豊橋市在住で、現在小学3年生と年少の男の子を育てながら、専門的な知見と自身の等身大の子育て経験の両方を活動に活かしています。2023年3月に個人事業主として活動をスタートし、豊橋・東三河エリアでパパ・ママをつなぐ交流会を中心に展開してきました。活動を続ける中で、「助けてほしいのに言葉に出せない」という問題は東三河だけでなく全国共通の社会課題だと確信するようになり、地域の壁を越えて課題を解決したいという覚悟を持って、2025年に一般社団法人として法人化しました。


コロナ禍が変えた、子育ての景色

上の子の時はコロナ前で、産院や支援センターで自然と交流が生まれていました。出かければ誰かに会えて誰かと話せて、それが子育ての楽しみの一つでした。 ところが下の子をコロナ禍に出産すると環境は一変。産後教室は中止かオンライン、支援センターでもママ同士が言葉を交わさずに帰る日々。「今日、誰とも大人と喋っていない」と気づく孤独感が積み重なりました。

交流会に来てくれた若いお母さんたちに「以前は支援センターでママ同士が自然に話していたんですよ」と伝えると、「えっ、そうなんですか?ただ子どもを遊ばせて帰るだけの場所だと思っていました」と驚かれることがあります。孤立が「当たり前」になってしまっている現実――この子育て環境を変えたいという思いが、活動の原点です。


「助けて」と「助けたい」を、目に見える形に


エレベーターのない駅のホーム。ベビーカー片手に、よちよち歩きの子どもの手を繋ぎ、階段を昇り降りした時の孤立感。外出先で子どもをなかなか泣き止ませられず、母親である自分を責めた時の悲痛感。 一方で、困っている親子に声をかけたくても「迷惑かもしれない」と踏み出せなかった経験もあります。助けを求める側と助けたい側、双方の思いが可視化されれば人と人がつながれる――そう気づいた時、「子育てマーク」のアイデアが生まれました。

子育てマークはキーホルダーとステッカーでそれぞれ二種類あります。困っている時に声をかけてほしいという気持ちを表すものと、子育て家庭を応援・サポートしたいという気持ちを表すものです。実際に手を差し伸べられなくても、マークをつけているだけで「大丈夫だよ」「いつも頑張ってるね」という温かい気持ちが伝わる。その安心感が、孤立した親子の心を救うと信じています。マタニティマークと異なり、お母さんだけでなく、お父さん、祖父母、地域の方、学生さんまで、子育てに関わるすべての人が使えるマークです。豊橋のように外国籍の方が多い地域では、言葉の壁を越えて思いをつなぐ役割も果たします。
全国7000名を対象にしたアンケートでは、「助けてほしくても言葉に出せない」と答えた方が93%に対し、「助けたいと思ったことがある」と答えた方が98%にのぼりました。社会はもっと温かい。ただ言葉が交わされないだけで、助けたいという思いはそこかしこにあふれています。子育てマークは、その見えない思いを可視化し、人と人がつながるきっかけをつくるためのツールです。中日新聞や毎日新聞など32社35媒体のメディアにも取り上げていただき、クラウドファンディングには北海道から奄美大島まで全国から支援が集まりました。将来的には母子手帳交付時にマタニティマークとともに行政から配布される形を目指しています。 

子育てマーク

【子育てマークの使い方】

子育てマークはキーホルダーとステッカーがあり、バッグや荷物につけて使います。

🟡 助けてほしい方向け

 「子育て中で、困った時に声をかけてもらえると助かります」という気持ちを表すマーク。

 外出先につけておくことで、周囲に気づいてもらいやすくなります。

🔵 応援・サポートしたい方向け

 「子育て家庭を応援しています。できることがあれば声をかけます」という気持ちを表すマーク。

 つけているだけで、子育て家庭への温かい意思表示になります。

対象:ママ・パパ・祖父母・地域の方・学生など、子育てに関心のあるすべての方

入手方法:niko’co公式ホームページ(https://nikoco.or.jp/)から入手可能(準備中)

Instagram@maiii39thanks.nikoco



交流会・座談会、そして全国へ

子育てマークと並行して、地域での交流会活動にも力を入れています。毎回「40代ママの会」「東三河以外の出身者の会」などテーマを設け、共通点のある人同士が集まることで自然と会話が弾む場をつくっています。「引っ越して4年、初めてママ友ができた」「ママ友ができやすいイベントナンバーワン」という声も届いており、一人ひとりのつながりを丁寧に紡いでいます。パパ育児座談会やママ向け起業家交流会も定期的に開催し、子育てをめぐるつながりをあらゆる角度から生み出しています。

niko’coでは、交流会やイベントへの参加者を随時募集しています。子育てマークの普及や活動全般へのご支援・ご協力も広く呼びかけています。「できる人ができることを」ーーその温かい気持ちが、孤立した子育てをなくす大きな力となり、助けてくださった方のウェルビーイングにもつながります。 

子育て中の方へ伝えたいのは、「一人で頑張りすぎないでほしい」ということ。頼ることは決して弱さではありません。子育てマークが、あなたと社会をつなぐきっかけになれたら――そんな思いで、今日も活動を続けています。

  


田村 麻生(たむら・まい)さん

一般社団法人niko’co 代表理事。2023年3月に個人事業主として活動を開始し、2025年に法人化。「孤立した子育てをなくす」をミッションに、「子育てマーク」の考案・普及と地域交流会の開催に取り組む。愛知県豊橋市を拠点に活動中。