旬を食べよう~東海地方の伝統野菜~【養父早生(やぶわせ)たまねぎ】愛知県東海市、知多市

日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。

そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

「あいちの伝統野菜」に選定されている「養父早生たまねぎ」(2025年2月中旬、愛知県大府市の産直店にて購入)
目次

平形で、みずみずしく辛味が少ない極早生(ごくわせ)品種

冬の少雨、寒波を経て、ようやく日差しに春めいた暖かさが感じられるようになってきました。
今回は、この時期に旬を迎えている「養父早生たまねぎ」を取り上げます。

養父早生たまねぎの発祥地は、現在の愛知県東海市養父町周辺とされています。
現在の主な産地は東海市とその南側に接する知多市で、両市のタマネギ農家の有志「玉葱原種保存部会」によって採種や栽培などが行われているそうです。

通年出回っている一般的なタマネギは収穫後に1カ月ほど乾燥させてから出荷されますが、春先に出回る早生種の総称である「新たまねぎ」は、収穫後すぐに出荷されます(農林水産省HPより)。
新たまねぎの中でも超極早生種に分類される「養父早生たまねぎ」の収穫期は例年1月~4月、旬は2月~3月とされています。

外見の特徴は、形が平べったくて、皮が黄色っぽいこと。肉質はみずみずしく辛味が少ないため、サラダなどの生食に向いているとされますが、加熱すればとろけるようなやわらかさと甘みを味わえるそうです。

生食で有効成分を取り入れ、フレッシュな美味しさを味わう

タマネギの有効成分として、抗酸化作用や血液サラサラ効果があるとされる硫化アリルが知られていますが、加熱すると違う物質に変化するため、こうした効能を取り入れるには生食がお薦めです。
ここでは、生食で美味しく食べられるお手軽レシピをご紹介します(ほとんどが、インターネットなどに公開されているレシピにアレンジを加えたものや、昔から実家で食べていた料理です)。
※硫化アリルはタマネギやネギなどに含まれる辛味成分

養父早生たまねぎには、一般的な玉ねぎと比べてみずみずしくて辛味が少ないという特徴がありますが、全く辛味がないというわけではありません。
生食する場合は、より食べやすくするために、繊維を断ち切るように薄く切ったり、細かく切ったりして、空気に触れる部分を多くする方法が有効です。
硫化アリルには揮発性が高いという性質があるため、水にさらすより消失量が少なくてすみます(水にさらす方法は辛味抜きの手段としてよく使われますが、ビタミン類やそのほかの栄養分も流出してしまうため、お薦めできません)。

養父早生たまねぎスライス

繊維を断ち切るように薄く切って、お好みのドレッシングと和えて食べます。
上の写真では、すりおろした養父早生たまねぎに、酢とみりん、塩、油を混ぜたドレッシングを合わせています。
シャリシャリとした歯応えが心地よく、さわやかでお薦めですよ。
ほかに、削り節としょうゆというシンプルな組み合わせや、麺つゆマヨネーズ、みそマヨネーズなどと和えても美味しいです。

養父早生たまねぎと春キャベツのコールスロー

1)あらくみじん切りにした養父早生たまねぎと春キャベツに塩コショウをふってよくかき混ぜます。
2)10〜15分ぐらい置いてから水気を軽く絞り、適量のマヨネーズと酢、さとう少々を加えて味をなじませます。
この基本のコールスローをたくさん作っておけば、後で小分けにして、ツナ缶を足して味変したり、ポテトサラダに混ぜ込んだり、サンドイッチの具にするなど、色々と活用できて助かりますよ。
(あまり日持ちはしないので、1~2日で使い切りましょう)

加熱して、とろりとした食感と甘みを味わう

日本食品標準成分表によると、タマネギを油炒めにすると、生と比べて糖類が10%〜19%増加することがわかっています。
また、硫化アリルは加熱されるとプロピルメルカプタンという物質に変わるそうですが、この物質には胃の粘膜を保護して胃の血流を促す働きがあるといわれます。
同じくタマネギに含まれ抗酸化作用などを持つケルセチンは加熱してもほとんど変化しないといいます。
加熱したら甘くやわらかくなる上に、体に良い成分もあまり損なわれることがなさそうです。

養父早生たまねぎの丸ごと和風スープ

1)外皮をむいて根と茎を切り落とした養父早生たまねぎの底の部分に、包丁で十字に切り込みを入れます。
2)耐熱容器にだし汁と酒、みりん、しょうゆを合わせたつゆの中に、1の養父早生たまねぎを浸して、電子レンジで加熱(500ワットで約12分=低温でじっくり)します。
スプーンで切り崩せるくらいとろとろに仕上がります。

和風で油も入っていないので、おなかに優しく食べやすい一品です。
洋風にしたい場合は、コンソメと水、白ワインを合わせたつゆにベーコンの細切りを加えて電子レンジで加熱し、仕上げにパセリのみじん切りを加えます。

養父早生たまねぎの肉巻き焼き

1)養父早生たまねぎをくし切りにし、豚肉の薄切りで巻きます。
2)1に小麦粉をまぶし、油をしいて熱したフライパンで焼きます。
3)両面がキツネ色になるまで焼いたら、みりんとしょうゆを回しかけ、少しとろみが出るまで煮絡めます。
※彩りに、キヌサヤを加えました(すぐ火が通るので、加熱のタイミングは、みりんとしょうゆを回しかける直前)。

やわらかくなった養父早生たまねぎが甘くて、豚肉のコクと甘辛い味がよく合います。

豚丼

1)油をしいたフライパンを熱して、豚の薄切り肉を炒めます。
2)薄切りにした養父早生たまねぎを加えて炒め合わせます。
3)酒、みりん、麺つゆを加えて煮立てます。
4)キヌサヤを加えて一煮立ちさせたら、ご飯をよそった器に盛り付けます。

養父早生たまねぎの薄切りは火の通りが早いためサッと作れて、ご飯が進んじゃいます。

養父早生たまねぎとツナ缶の炊き込みご飯

1)コメをといで炊飯釜に入れ、酒と麺つゆ適量を加えた後、コメの分量に合わせた水加減をします。
2)養父早生たまねぎの上から3分の2ぐらいの深さまで、8等分に切り目を入れます。
3)1の炊飯釜に油をきったツナ缶をあけ、2の養父早生たまねぎを入れます。
4)炊飯器にツイッチを入れてご飯を炊きます。
5)炊き上がったら10分ぐらい蒸らして、しゃもじでよくかき混ぜます。
※タマネギが甘くて、おこげが香ばしくて、美味しいですよ。

通年で回っているタマネギよりもみずみずしくてクセの少ない養父早生たまねぎは、意外と和風料理での使い勝手が良いのも魅力です。
生でも加熱しても美味しく、また身体に良い成分があるので、どんどん使いたい食材です。

※掲載情報は公開日時点のものとなります

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この記事を書いた人

名古屋生まれ、名古屋育ち。
季節の移り変わりを観察するのが大好きなアラフィフ世代。新聞記事制作や、出版社にてガイド本等の制作経験あり。
現在は、旅や町ネタに関する記事を執筆しています。観光や販促のお手伝いも。

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