かつて、市街地の急速な発展によって「白い街」とも呼ばれた名古屋ですが、道路整備に合わせて街路樹の植栽に注力し、今では、市域における街路樹密度が全国の大都市でトップクラスにまでなりました。
2021年からは、街路樹の大木化や老朽化といった課題を解決し整備を進める「街路樹再生なごやプラン」も始まり、道路空間と調和した街路樹づくりが進められています。
「名古屋の街路樹」では、名古屋市内の、街路樹と街並みが調和した特徴的な風景を取り上げ、その魅力をご紹介していきます。

尾張の歌枕の一つ「夜寒(よさむ)の里」の春を彩る白い点描
あちらこちらから花の便りが届き、一気に春めいてきましたね。
今年はユキヤナギの開花が早いと聞いて、真っ白な雪にたとえられる可れんな「ユキヤナギ」の花を見に、熱田区の中央北寄りを東西に横断する市道「雁道線」を訪ねてきました。
※本記事中の写真は全て2026年3月12日に撮影したものです。

高蔵交差点から西へ向かう道は上り坂になっていて、上りきった辺りは、古くから、閑静で眺望の良い別荘地として「夜寒の里」と呼ばれ、尾張の歌枕の一つとして名を馳せていたのだそうです。
確かに、高蔵交差点から西方向に伸びる緩やかな坂道を少し上って振り返ると、結構見晴らしがいいことに驚きます。

車道を挟んで両側の歩道に、ユキヤナギの白い点描がずーっと続いています。
合間に立ち並んでいる高い木は、秋の紅葉が美しいトウカエデ。
落葉広葉樹なので、冬から春にかけては葉っぱが落ちてしまっていて、何の木かわからないですね。

小さな公園ですが、熱田神宮の摂社「高座結御子(たかくらむすびみこ)神社」、「高蔵公園」と接していて、緑いっぱいの空間になっています。
「高座結御子神社」は子育ての神様として知られており、境内には古い井戸や、弥生時代の貝塚跡もあって、じっくりと散策したくなる神社です。

この区間は歩道が広く、とても気持ち良く歩ける空間となっています。

南北を走る広い「伏見通(国道19号)」を横切った先にも、ユキヤナギの並木は続いています。

旗屋橋を渡ってその西側(江川線までの約500メートル)にもユキヤナギの植栽はありますが、この旗屋橋の東側で一旦途切れますので、今回は「高蔵」交差点からこの「旗屋橋」東までの約550メートルを範囲とさせていただきました。
なので、上の写真は、今回の並木の西端に当たります。
伏見通を挟んで西側はユキヤナギの勢いが少し控えめで、東側の方がにぎやかな雰囲気です。
さまざまな角度から
ユキヤナギの道をクローズアップ

まだまだつぼみや咲き具合が進んでいない場所もありましたが、満開状態の場所では、この華やかさ。
この部分だけ見ていると、街路樹というより、お花畑にいるような錯覚をしてしまいそうです。

日当たりの良くないところでは、こんな感じで、開花準備中の株も。
ユキヤナギって、咲くとすごく華やかですが、枝が細いこともあって、つぼみ状態のときは本当に地味なんですよね。

枝に沿って所狭しと並んで、上に向かって咲き競っています。

左の写真の花たちは、オシベがぎゅっと真ん中に集まって、まだ花粉を出していません。
右の写真の大部分の花たちは、オシベが立ち上がって花粉を放ち、真ん中にあるメシベが受粉をして、子房が赤く色づきながらふくらんでいます。
小さい花の集まりですが、よ~く見てみると、いろいろな変化があって、興味深いです。
ここまで見てきたように、華やかで見応えのあるユキヤナギの花たちですが、足もとに広がっている別の世界にも目を向けてみましょう。

左上から時計回りに、ボケ、ジンチョウゲ、ヒヤシンス、レンギョウ(いずれも推定)。
真っ赤なボケの花の上では、後ろ脚に大きな花粉団子を付けたミツバチが、せっせと花粉集めに励んでいました。
香りに引き寄せられるようにして見つけることができたジンチョウゲは、今回歩いた街路に1本しかなかったようで、レアアイテムを発見できたような、嬉しい気持ちになりました。

左上から時計回りに、オオキバナカタバミ、ホトケノザ、コハコベ、フラサバソウ(いずれも推定)。
どれも雑草ではありますが、素朴で可愛らしい、春の花たちです。

伏見通の西側で見つけたムスカリ(推定)の群生。
伏見通の東側でもちょこちょことムスカリは見かけましたが、こんなに群生しているのは、ここだけでした。
誰かが植えたものが、自発的に増えたのでしょうか。
棒を付けたブドウの房がたくさん地面に突き刺さっているようで、面白い光景です。
今回ご紹介した東西の「市道・雁道線」のユキヤナギ並木は、距離にして約550メートル。
個人的に車でよく通る道なのですが、ユキヤナギに注目したことがなかったので、こんなに美しい道であることを今回初めて知ることができました。
また思いがけず、昔から眺望の良い場所として歌によく詠まれたという「夜寒の里」周辺を散策できるよい機会にもなりました。
歩道も広く、歩きやすいため、夜寒公園や高蔵公園、高座結御子神社も含めて、ゆっくりと何度でも散策したい道です。
※掲載情報は公開日時点のものとなります
