かつて、市街地の急速な発展によって「白い街」とも呼ばれた名古屋ですが、道路整備に合わせて街路樹の植栽に注力し、今では、市域における街路樹密度が全国の大都市でトップクラスにまでなりました。
2021年からは、街路樹の大木化や老朽化といった課題を解決し整備を進める「街路樹再生なごやプラン」も始まり、道路空間と調和した街路樹づくりが進められています。
「名古屋の街路樹」では、名古屋市内の、街路樹と街並みが調和した特徴的な風景を取り上げ、その魅力をご紹介していきます。

※桜通りを挟んで南と北に分かれているオレンジ色の点線部分
南(布池新栄町線)と北(横代官布池町線)を合わせて400メートル弱
秋に花が咲く「アキニレ」
秋に花が咲く木の中でも、開花期が比較的早い(9月ごろ)というアキニレを見に、東区の代官町〜葵1丁目を訪れました。

桜通の北側に伸びる「にれのこみち」は、1982年(昭和52年)11月に竣工。
名古屋市の「コミュニティ道路」第1号とのことで、可愛らしいモニュメントが立っています。
名古屋市のHPによると、コミュニティ道路とは、歩行者優先の考え方に立って整備した生活道路で、自動車の走行速度を低下させ、人と車の共存を図るための道だそうです。
この「にれのこみち(市道・横代官布池町線)」も、こぢんまりとした一方通行の車道の両脇にカラフルな歩道が整備されており、歩くのが楽しくなるような道になっています。
そして、その車道と歩道の間に、数メートルおきにアキニレの木がたたずんでいます。

閑静な住宅街に、背の高いスマートな雰囲気のアキニレの木がよく合います。

桜通の南側から南方向を見たところで、左側(東)は布池公園、右側(西)は市立葵小学校です。
南側のコミュニティ道路のアキニレは枝の形が面白くて、空に向かって両手を広げて踊っているように見えるものもあります。

こちらも車道は一方通行で、両側に歩道があり、アキニレの木が数メートルおきに植えられています。
アキニレってこんな木です

樹皮が所々はげて不ぞろいな鱗片状になっていますが、これはアキニレの特徴で、正常な状態のようです。
「ニレ」の語源には、樹皮をはぐと粘液が出て幹が「濡れ」たように見えるからという説と、朝鮮語でニレ属の木を意味する「ヌルナム」に由来するという説があるそうです(アキニレは日本以外に、中国南部、台湾、朝鮮半島に自生)。
説明札にある別名「カワラゲヤキ」は、ケヤキ(ニレ科ケヤキ属)に似ていて、川岸などに自生していることが多いからというのが理由のようです。
硬い木材として知られるケヤキより硬いため、「イシゲヤキ」という別名もあるそうです。
日本には、ニレ科ニレ属の木が3種類(アキニレ、ハルニレ、オヒョウ)分布していて、ハルニレとオヒョウは春、葉が出る前に花を咲かせ、葉が茂っている状態の秋に開花するのはアキニレだけなのだとか。
またハルニレとオヒョウは寒さに強く、北海道にも自生するのに対して、アキニレは暑さや病気に強く、西日本に多く自生しているようです。
樹高も、ハルニレは30〜35メートル、オヒョウは20〜25メートル、アキニレは10〜15メートルと、違います。
9月に、とても小さな花が葉のつけ根に固まって咲くというアキニレですが、よ〜く目を凝らしても、見つけることはできませんでした。
花が散った後すぐに実ができるため、すでに散った後だとしても、見落とすことはないはずですが…。
異常気象のせいで時期がずれているのでしょうか、残念。

味のある凹凸ですね。
夏には、樹液を求めて多くの昆虫が集まってくるといいます。

夏の名残。
カマキリがとまっているのも見かけました。

ふと隣接する布池公園に目を向けると、赤い実を付けて、少しずつ紅葉が始まっている木を見つけました。
まだ残暑が厳しい日が続いていますが、確実に季節は進んでいることを実感させられます。
季節が進んで11月にもなれば、アキニレの木も鮮やかな黄や赤に色づくでしょう。
周辺にはイチョウの木も多く、そのころにまた訪れてみたいなと思いました。
「にれのこみち」を含む東区のアキニレの並木は、落ち着いた街並みによくマッチしており、通常は山間や川原に自生しているアキニレを街なかでじっくり観察できる空間でもあります。
名古屋の街路樹にアキニレは少なく、市では倒木事故のリスクが高い樹種としていますが、事故のないよう、大切に維持していってほしいなと思います。
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