かつて、市街地の急速な発展によって「白い街」とも呼ばれた名古屋ですが、道路整備に合わせて街路樹の植栽に注力し、今では、市域における街路樹密度が全国の大都市でトップクラスにまでなりました。
2021年からは、街路樹の大木化や老朽化といった課題を解決し整備を進める「街路樹再生なごやプラン」も始まり、道路空間と調和した街路樹づくりが進められています。
「名古屋の街路樹」では、名古屋市内の、街路樹と街並みが調和した特徴的な風景を取り上げ、その魅力をご紹介していきます。

自動車も歩行者も通るのが楽しい─緑豊かな道
街路樹は、特徴的な一種類の木をメインに、サブ的な植物で補ったりして形成するのが一般的ですが、ある程度幅のある広い道路では、統一感を持たせつつ、多彩な樹種を展開するケースもあります。
昭和区西部を横断する山王通では、「東郊通2」交差点から「御器所通」交差点までの約1.5キロを、いく筋もの街路樹が彩り、通行する人々の心を癒やしています。
※本記事中の写真は全て2025年9月24日に撮影したものです。

まず歩道の街路樹の充実ぶりに目を見張ります。
写真で標示を見るとわかりますが、向かって左のレーンが自転車用の道、右2つのレーンが歩行者用の道で、それぞれを木や草花で区切っているのです。

山王通の歩道を区切る植物は、車道側から近い順に、イチョウ、低木や草花、トウカエデが植栽されています。

歩道の街路樹は比較的スマートに整形されていますが、中央分離帯の街路樹はボリュームがあり、絶妙なバランスが保たれているように見えます。

名古屋市緑政土木局の資料によると、このエリアの中央分離帯には、クスノキ、ケヤキ、ツツジ、サザンカ、アベリアが植えられているそうです。
枝ぶりや葉の色などから、写真に写っている樹種を推測すると、大きい木では左からケヤキ、クスノキ、ケヤキで、中低木では左からサザンカ、ツツジ、サザンカ、そのすき間を埋めているのがアベリアかなと思いますが、果たして正解はどうでしょうか。

信号機と比べると、街路樹の大きさがよくわかります。

山王通の歩道は「ごきそ緑道」としても知られ、地域の有志で形成される「ゆめ緑道ごきそ」(名古屋市の緑のパートナー)によって緑化・美化活動が行われています。
多彩な花をあちらこちらで見ることができ、途中で行き違った歩行者や自転車の人も、心なしかゆっくり楽しそうに通行しているようでした。
厳しい暑さを乗り切った街路樹や草花たち

2025年の夏はことのほか暑く、街路樹たちにとっても相当な試練だったようで、ところどころ、葉っぱが枯れてしまっている木もありました。
残念に思いながら散策していると、枯れてしまったイチョウの葉っぱの後から新しい葉っぱが芽吹いているところを見つけたのです。
逆境に負けない力強さを教えてもらった気がしました。

雌雄異株のイチョウは、雌株でないと実がなりません。
一般に、街路樹で植えられているイチョウは雄株が多いと聞いていたので、もしも雌株を見つけられたら面白いと思い、ダメ元で探しながら歩いていたら、たくさんあるイチョウの中で2本だけ、実のなっている木を見つけました。
しかも鈴なりに銀杏がぶら下がっています。
特ににおいは感じなかったので、まだ熟していないのかもしれませんが、見つけられてラッキーな気分になれました。

9月下旬というのに、ムクゲがまだまだきれいに咲き残っていました。
これから旬を迎えるコギクやヒガンバナも、咲き誇る準備ができているようでした。

集まって咲く小さな花や、はかなげで可愛らしい花もたくさん堪能できました。
本当に楽しく散策できましたので、花たちのお世話をしてくださる「ゆめ緑道ごきそ」の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいになりました。
三分割された広い歩道にバラエティ豊かな植栽、中央分離帯の力強い木々たち。
山王通の多重街路樹は、四季折々の植物の美しさを楽しみながらのお散歩コースとしてもお薦めです。
これから秋本番に向かって、ケヤキやトウカエデ、イチョウといった大きい木たちは美しく紅葉してさらに輝きを増すでしょう。
街路樹の存在のありがたさと意義を噛み締めています。
※掲載情報は公開日時点のものとなります