かつて、市街地の急速な発展によって「白い街」とも呼ばれた名古屋ですが、道路整備に合わせて街路樹の植栽に注力し、今では、市域における街路樹密度が全国の大都市でトップクラスにまでなりました。
2021年からは、街路樹の大木化や老朽化といった課題を解決し整備を進める「街路樹再生なごやプラン」も始まり、道路空間と調和した街路樹づくりが進められています。
「名古屋の街路樹」では、名古屋市内の、街路樹と街並みが調和した特徴的な風景を取り上げ、その魅力をご紹介していきます。

閑静な丘陵地を彩る美しい香木
街を吹き抜ける風が秋めいてきました。
街路樹の中には、紅葉が始まっているものもあり、季節が進んでいるのを感じます。
今年(2026年)は、関東でキンモクセイの開花が9月20日前後と、前年より3週間ほど早かったというニュースを聞き、東海地方はまだかな、と楽しみにしていました。
キンモクセイの開花には気温が深く関係していて、その一つに、秋に最低気温が17〜18度前後になると開花が促されるということがあるそうです(東京では9月10日に最低気温17.7度を記録し、そこから1週間ぐらいで開花の知らせが聞かれるようになりました)。
名古屋の最低気温が9月29日に18.6度となり、「そろそろ咲き始めているのでは」と、千種区の覚王山近くにあるキンモクセイの並木道を訪ねて来ました。
※本記事中の写真は全て2026年10月7日に撮影したものです。

キンモクセイ並木の東端には特に目印がないので、「自由ヶ丘3」交差点から南西に向かって歩いてみました。
しばらくは、紅葉が始まったハナミズキの並木が続きますが、姿は見えないけれど、風に乗ってキンモクセイの香りが少しずつ感じられるようになってきます。

ここから、きれいにせん定されたキンモクセイの並木が800メートルほど続きます。

キンモクセイの木の高さは2〜3メートルほどですが、枝ぶりや花の付き方は様々です。
中でも、写真手前の木は高さ3メートルちょっとあると思われ、枝ぶりや葉付き、花付きも良く、全体的に大きかったです。
すぐ脇にベンチもあって、ここでのんびり香りを楽しむのも良さそうです。

この辺りのキンモクセイは比較的こぢんまりとしていて、目の高さで花を楽しめました。

南側の歩道は車道と同じ高さですが、車道を挟んだ北側歩道は、隣接する墓苑に合わせて小高くなっています。

一つ前の写真の地点から、反対方面を振り返ると、こんな感じです。
キンモクセイも、上段(写真左/北側歩道)と下段(写真右/南側歩道)で立体的に楽しめ(?)ます。

この交差点がキンモクセイ並木の西端の目印になるのですが、実際は交差点から50メートルほど東に行ったところから並木は始まっています。
かわいらしいキンモクセイの花をクローズアップ

一つひとつの花は直径5ミリぐらいなので、遠くからだと花の姿は見えにくいのですが、3メートルぐらいの距離まで近づくと、花が咲いている様子がよくわかります。

すぐ根元まで近づいて見上げてみると、思ったよりたくさんの花が咲いているのがわかります。

葉っぱの付け根に小さな花が集まって咲いていて「こんな模様のカバンやハンカチがあったら欲しいな」と思うほどのかわいらしさです。
思わず見入ってしまいました。

さらに花に近づいてみました。
葉腋(ようえき=葉の付け根)に集まって咲いた少し厚みのある花は深く4裂し、小さいながらも存在感があります。
キンモクセイは雌雄異株の常緑小高木なのですが、江戸時代に雄株だけが中国から渡来したと伝わっていて、挿し木で増やされてきたのだそうです。
日本で見られるキンモクセイの花は基本的に全て雄花で、2個のオシベと、不完全なメシベ(のようなもの)が1つありますが、結実はしないのだそうです。

咲きかけの花と、これから咲くつぼみ(写真中央部の黄緑色の球体)です。
咲き始めだからなのか、オレンジ色が少し淡いですね。

写真中央上寄りのところにつぼみが2つありますが、葉の付け根に花芽が付くことがよくわかります。

左上から時計回りに、ツユクサ、ヘクソカズラ、ホシアサガオ、タマスダレ、ヤブラン、ヒメジョオン(いずれも推定)。
夏から秋へ、季節の移り変わりを感じさせる花たちですね。

左から、オオシロカラカサタケ、オオイタビ(いずれも推定)。
写真左のオオシロカラカサタケは、カサの直径が12〜13センチぐらいありそうな大きくて白いキノコですが、調べてみると、毒性が強いことがわかりました。
近縁に、加熱すれば食べられるカラカサタケがありますので、間違えないようにしたいですね。
写真右のオオイタビは、クワ科イチジク属の常緑つる性木本。
雌雄異株で、雌株にできる果嚢(かのう)は熟すと食用可能で、薬用(漢方、民間療法)に用いられたりもしてきたようです。
今回ご紹介したキンモクセイの並木道は、閑静な丘陵地を東西に走る約800メートルの道。
道中、それとなくキンモクセイの株数を数えてみたら、70数本ありました(数え間違えているといけませんが、確実に70本以上はありました)。
途中、間隔が空いている場所もありましたが、こんなにまとまった本数が見られる場所は、なかなかないのではないでしょうか。
東側から西進すると少しずつ下ることになるので、進行方向の見晴らしがよく、歩くのも楽に感じました。
「今年もこの香りを堪能できた」と、心が浄化されるような甘い香りで胸がいっぱいになりながら、楽しい散策を終えました。
※掲載情報は公開日時点のものとなります
