旬を食べよう~東海地方の伝統野菜~【宮重だいこん】愛知県清須市

日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。

そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

「あいちの伝統野菜」に選定されている「宮重だいこん」
(愛知県清須市内の産直店で購入)
目次

尾張藩主に美味しさを認められ
命名された「宮重だいこん」

袋から出した「宮重だいこん」
葉の部分は約10センチ、根の部分は約35センチだった

寒い時期に美味しくなる野菜の代表格に、ダイコンが挙げられます。

中央アジア原産とされる(未だ定説はないようです)ダイコンの仲間は、西ルート、東ルートをたどって世界中に広まり、食用とされています。
日本へは中国経由で弥生時代に渡来したといわれ、奈良時代の『古事記』や、平安時代の『延喜式』、『和名類聚抄』といった古文書にもその名が出てきます。
江戸初期には各地で広く栽培されていたそうで、旧春日村宮重地区(現・愛知県清須市春日宮重町)に伝わる「宮重だいこん」も、そんなダイコンの一つです。

名古屋市の西北部にある清須市の最北部に位置する宮重地区で古くから作られていたと伝わり、江戸時代の文献でもダイコンの名産地として、その名が挙がっています。
なで肩で先端が丸く、ずんぐりとしたスタイルが特徴で、甘みがあって煮くずれしにくいのだそうです。
現在日本に流通する大根の主流となっている「青首大根」系統の元祖ともいわれています。

戦後は、病気の発生などによって一度衰退したそうですが、平成に入って「宮重大根純種子保存会」が発足して復活に成功し、現在も生産が続けられています。
2002年に、「あいちの伝統野菜」に選定されました。

旬は11月から12月ごろとされ、期間中は、清須市内の産直店やスーパーなどで販売されますが、結構人気があって、早い時間帯で売れてしまうこともあるので、注意が必要です(今回、お昼ごろ買いに行ったら、最後の1本でした)。

清須市春日宮重町内に建てられた「宮重大根発祥之地趾石碑」

せっかく清須市まで「宮重だいこん」を買いに行ったので、発祥の地の石碑を見てみようと、インターネットの情報を頼りに探してみたら、名岐バイパス(※)の西側に広がる農業用地にポツンと建っていました。
※最寄りのインターは「西春」インターです。

尾張藩主が当地に鷹狩りに来て、庄屋にて昼食に出された風呂吹き大根を大変気に入り、「尾張の名物 宮重大根と呼ぶがいい」と名付けられたことや、明治維新にいたるまで代々の尾張藩主に献上されたことなどが記されています。
「そんなに気に入ったのか」と思うと、当日産直店で買った「宮重だいこん」を風呂吹き大根にして食べるのが、より楽しみになりました。

甘みがあり、煮くずれしにくいダイコン

食物繊維やミネラルが豊富なダイコンの根の部分は「上」「中」「下」で特徴が異なり、辛味が少なく比較的身のしまった上部は生食に、比較的やわらかい真ん中辺りは煮物、辛み強めの下部分は辛みを目的とする大根おろしや濃いめの味付けの煮物に向いています。

生の状態では、デンプンを分解する「アミラーゼ(別名ジアスターゼ)」という酵素を多く含み、「オキシダーゼ」という解毒に優れる酵素や、「リパーゼ」という脂質を分解する酵素もあり、胃腸の調子を整える効果が期待できます。
胃腸を労わるなら、浅漬けやサラダ、大根おろしなど、生食がお薦めです。

葉は、緑黄色野菜に分類されるほどβカロテンが豊富で、止血と骨の健康に作用するビタミンK、DNAやアミノ酸の合成に関わる補酵素である葉酸、ビタミンCなども多く含みます。
少しだけ付いている葉っぱも、無駄にせず食べてみることをお薦めします。

「宮重だいこん」は甘みがあって、長時間火にかけても煮くずれしにくいため、幅広い調理方法で楽しむことができます。

「宮重だいこん」の紅白なます

まずは箸休め用に、短時間でできる浅漬け2種類を作ってみました。
生で食べるため、上の部分を使います。

1)「宮重だいこん」とニンジンを細切りし、別々にポリ袋に入れて塩を振り入れ、よく揉んで10分ぐらい置きます。
2)酢、さとう、みりんを3:2:1で混ぜ合わせて、600ワットの電子レンジで30秒~1分加熱します。
3)2)が冷めたら、みりんと同量のユズの果汁を合わせます。
4)1)の「宮重だいこん」とニンジンの水気を切り、細切りにしたユズの外皮と一緒に3)の漬け汁に入れます。
5)2~3分、味をなじませたら完成です。

ユズがなくてもさっぱりとして美味しいですが、ユズが入ると軽やかで爽やかな風味も一緒に味わえるので、ユズ入りが薦めです。

「宮重だいこん」と塩昆布の浅漬け

1)短冊切りにした「宮重だいこん」をポリ袋に入れて塩とさとうを振り入れ、よく揉んで10分ぐらい置きます。
2)水気を切り、塩昆布と細切りにしたユズの外皮、ユズの果汁を合わせます。
3)2~3分、味をなじませたら完成です。
※各食材の分量はお好みで、味を確認しながら調整します。

「宮重だいこん」の風呂吹き

次に、ダイコンの味をよく実感できる煮物を3種類作ってみました。

味付けがシンプルで、ダイコンの味わいがダイレクトに伝わる風呂吹きには、味や食感のバランスが良い真ん中辺りを使いました。

1)大きめの鍋に、だし昆布とたっぷりの水を入れておきます(10分~20分ぐらい)。
2)皮をむいて、厚さ約3センチの輪切りにした「宮重だいこん」の断面に十字に切れ込みを入れて、1)の鍋に入れて強火で加熱します。
3)煮立ったら火を弱め、40分~50分加熱します。
4)ダイコンを煮ている間に、みそダレを作ります。さとう、酒、みりん、みそを1:1:1:2の割合で混ぜ合わせ、小鍋に入れてよくかき混ぜながら弱火にかけ、表面につやが出るまで加熱します(電子レンジで加熱しても良いですが、加減が難しいので、今回は鍋を使う方法にしました)。
5)火が通って半透明になった「宮重だいこん」を器に盛って、みそダレをかけたら完成です。

全く煮くずれることなく、箸で切り分けるときはしっかりした感触なのに、口に入れると、じゅわ~っと優しいダイコンの甘みとだし昆布の旨みが広がって、しみじみと美味しさをかみしめました。
尾張の殿様がお気に召したのも納得です。

「宮重だいこん」とブリのアラの炊き合わせ

1)ブリのアラの下処理(全体に塩を振って15分おいたら熱湯を回しかけ、水で洗い、ぬめりやウロコ、血合いを取り除く)をして、食べやすい大きさに切っておきます。
2)「宮重だいこん」は2~3センチの厚さのイチョウ切りにします。
3)大きめの鍋に2)のダイコンを重ならないように並べ、その上に1)のブリのアラを広げて入れます。
4)酒と水を1:3の割合で入れ(具材全体が浸るぐらいまで)、落としぶたをして強火で約20分煮ます。
5)水の10分の1の量のさとうを加えて中火で約5分煮込み、さらに同量のしょうゆを加えて約5分煮ます。
6)落としぶたを外して、煮汁が少なくなるまで煮詰めたら完成。器に盛って、ユズの皮の細切りを散らすと、香りが良く、若干さっぱりした味わいを楽しめます。

いわゆる「ぶり大根」です。
脂の乗った寒ブリのコクが、旬の「宮重だいこん」に染みて、冬ならではのご馳走になります。

「宮重だいこん」のさっと煮

1)皮をむいて約5ミリの厚さでイチョウ切りにした「宮重だいこん」を油で炒めます。
2)お好みの練り物をそぎ切りにして加え、みりんと麺つゆで味付けしてさっと炒め合わせます。
3)水を少量加え、ふたをして2分ほど煮たら完成です。

手早く煮物を作りたいときにお薦めの一品です。
油で炒めるので、ダイコンの下の方を使っても苦みや辛みがほとんど気になりません。
※むいた皮は、千切りにしてざるに広げて3日ほど天日で干せば、自家製の「切り干し大根」になります。

「宮重だいこん」の葉とおかかの混ぜ込みご飯

栄養価の高い「葉」も、美味しく食べましょう。

1)「宮重だいこん」の上部から生えている葉を切り取って、きれいに洗います。
2)1)の中心部分を薄い輪切りにして、かつお節、しょうゆと混ぜ合わせます。
3)炊き立てのご飯に、2)を混ぜ込んだら、完成です。

ダイコンの葉の比較的やわらかい中心部分を使って、手軽にできる菜飯です。

「宮重だいこん」の葉の甘辛卵とじ

1)「宮重だいこん」の上部についている葉の外側部分をきれいに洗って、約1センチ幅の輪切りにします。
2)適量の豚肉を約1センチ幅に切って油で炒めます。
3)2)に火が通ったら、1)の葉を加えて炒め合わせます。
4)さとう、酒、しょうゆ(分量はお好み)で味付けし、溶き卵を回しかけて炒め合わせたら完成です。

ご飯によく合う常備菜として重宝しますよ。

尾張の殿様にその美味しさを認められ、名前を賜った「宮重だいこん」。
地元の人たちの努力で復活し、味わうことができることに感謝しつつ、余すところなく美味しく食べて、年末年始で疲れがたまりやすい胃腸を整えましょう。

※掲載情報は公開日時点のものとなります

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この記事を書いた人

名古屋生まれ、名古屋育ち。
季節の移り変わりを観察するのが大好きなアラフィフ世代。新聞記事制作や、出版社にてガイド本等の制作経験あり。
現在は、旅や町ネタに関する記事を執筆しています。観光や販促のお手伝いも。

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