日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。
そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

(愛知県岡崎市内の産直店で購入)
法性寺の僧侶が修行先から持ち帰り
岡崎に根付いたご当地ネギ

長さは60〜65センチぐらい
中国西部や中央アジアが原産地といわれ、日本へは奈良時代に渡来したと伝わっているネギは、古くから親しまれている野菜の一つです。
主に白い部分を食べる「根深(ねぶか)ねぎ」や、青い部分を食用にする「葉ねぎ」といった品種群があり、各地に定着しています。
愛知県岡崎市にも「法性寺ねぎ」というご当地ネギがあり、「あいちの伝統野菜」に選定されています。
葉は濃い緑色ですっきりと伸びて、京の伝統野菜でブランド産品の「九条ねぎ」によく似ていますが、根元の白い部分は若干曲がっています。
長さが約60センチと程よいサイズで、ピンと張った葉先は切られておらず、葉の中の汚れを気にする必要がないため、とても扱いやすいと感じました。
※きれいに洗って出荷されているので、全体的にも汚れは気になりません。
「あいちの伝統野菜」のHPでは、「法性寺ねぎ」の特徴として「京都の九条ねぎに似て甘く味が濃くて柔らかい」と紹介されています。
旬は11月から3月ごろとされ、期間中は、岡崎市内の産直店やスーパーなどで販売しています(確実に購入するには、事前に電話確認してください)。

「法性寺ねぎ」の名前の由来は、現在町名にもなっている「法性寺」です。
法性寺は、京都市と滋賀県大津市にまたがる比叡山延暦寺を総本山とする天台宗のお寺で、平安時代中期に創建されたと伝わる由緒ある古刹です。
その昔、この法性寺の僧侶が、修行先の延暦寺から持ち帰ったネギを植えたことから、一帯にこのネギが広まったとされ、「法性寺ねぎ」と呼ばれるようになったということです。

保護用の金網が貼ってあるので写真では見づらいですが、法性寺の山門脇には、2体の仁王像がにらみをきかせています。
この仁王像は、岡崎城鎮護のため、徳川家康によって甲山寺に移され、第二次世界大戦の岡崎空襲の直前(昭和20年7月)に当地に戻されて戦火を免れたそうです。
仁王像なのに、猛々しいというよりは、小柄で穏やかなたたずまいで、見ているとほっとする木像です。
※法性寺については、さまざまな興味深い歴史があるので、調べてみると面白いですよ。
適度に葉がやわらかく
甘みが強いネギ
「京都の九条ねぎに似て甘く味が濃くて柔らかい」という「法性寺ねぎ」の特徴を味わうべく、いくつか実際に調理して食べてみたので、以下にご紹介したいと思います。

今回「法性寺ねぎ」を購入した産直店で「焼いてそのまま食べると酒のつまみにいい」と聞いたので、焼いたネギを麺つゆにひたして、お酒のつまみだけでなく、ご飯のおかずにもなる料理にしてみました。
1)「法性寺ねぎ」の白い部分を5センチ程度の長さに切って、ごま油をしいたフライパンで焼きます(弱めの中火で、コロコロと転がしながら、じっくりと)。
2)ネギの側面全体に焼き色が着いたら、用意しておいた麺つゆに漬けて、完成です。
ネギの外側は少し歯応えがあって、中の方はトロッとして、噛み締めるとジュワーっと旨みが出てきます。
ネギ特有のにおいは若干抑えられているように感じましたので、ネギがあまり得意ではない人もネギの美味しさを味わえると思います(個人の感想です)。
コロコロ転がすのが面倒なら、グリルで焼いてもいいと思います(焦げ過ぎないようご注意ください)。

地元で「法性寺ねぎ」を作っていた人に「簡単で美味しい」と、教えていただいた食べ方です。
これも、ご飯にも、お酒にも合う一品です。
1)小口切りにした「法性寺ねぎ」とシラス、かつお節をボウルに入れて麺つゆとマヨネーズを適量加え、ざっと混ぜます。
2)油揚げの上部に切り込みを入れて、袋状になるよう、中の部分を開きます。
※今回は油揚げを焼くので、油抜きせずにそのまま使いました。
3)2)の油揚げに1)の具を詰めたら、口の部分を、爪楊枝か、適当な長さに折ったパスタで縫うように留めます。
4)フライパンで3)をよく焼いたら完成です(弱めの中火でじっくりと)。
※油揚げから油が出るので、フライパンに油を敷く必要はありません。
※具に味付けしてありますので、焼き上がった後に何かをかける必要はありません。
※教わったレシピには、マヨネーズを混ぜ込む工程はなかったのですが、自分の好みで勝手に付け足しました。マヨネーズなしでもあっさりとして美味しいので、お好みでどうぞ。

わさわさと茂る「法性寺ねぎ」を見て、「これでぎょうざをつくったら美味しそう」とひらめいてしまったので、つくってみました。
(以下の材料は目安ですが、ぎょうざが50個できました)
1)「法性寺ねぎ」一袋(8本)の根を切り落として、それぞれ縦に半分に切ってから、小口切りにします。
2)1)に小さじ1/2の塩を振り入れて、ざっと混ぜ合わせておきます。
3)大きなボウルに、豚ひき肉200グラム、みじん切りにしたショウガ(小指の第一関節ぐらいのサイズ)、酒大さじ2、しょうゆ大さじ2、片栗粉大さじ1、2)のネギを入れて、よく混ぜ合わせます。
4)市販のぎょうざの皮で3)の具を包みます。
5)中火にかけたフライパンに油をしいて、4)のぎょうざを並べたら、上から少し油をまわしかけて、水かお湯を深さ5ミリぐらいになるまで入れて、フタをして蒸し焼きします。
6)水気がなくなってきたら、フタを取って、さらに水分が飛ぶまで焼きます。
7)ぎょうざの底の部分に美味しそうな焼き色が着いて、ヘラで簡単に剥がせるようになったら、完成です。ポン酢を付けて食べます。
ネギのシャキシャキとした歯応えと、口の中にジュワーっと広がる旨み、ショウガの辛みで、とても美味しかったです(個人的に、ラー油なしで食べるのがオススメ)。
具材が少なくて済むので、普段のぎょうざより手軽に調理できた感覚があり、またつくろうと思いました。
ニンニクもニラも入れていないので、食後の口臭も気になりませんでしたよ。

「あいちの伝統野菜」のHPに、「法性寺ねぎ」のおすすめ料理は「煮物、薬味」とあったので、すき焼き風の鍋にしてみました(分量はお好みです)。
1)さとうと酒、みりん、しょうゆを1:2:2:2ぐらいの割合で鍋に入れて煮立たせます。
2)薄切りの豚肉を鍋に入れて、味をなじませながら煮ます。
3)食べやすい大きさに切った白菜、シイタケ、エノキ、かまぼこを入れ、フタをして煮込みます。
4)ある程度、具に火が通ったら、斜めに切った「法性寺ねぎ」と、食べやすい大きさに切った豆腐、シュンギクを入れ一煮立ちさせて、完成です。
クッタリと煮えた「法性寺ねぎ」は本当に甘くてとろける食感でした。
※ネギは、煮るとものすごくカサが減ってしまうので、「ちょっと多過ぎ?」というぐらいたくさん入れることをオススメします。

最後に、「法性寺ねぎ」を薬味にして、あっさりとした塩ラーメンをつくってみました。
1)ゆで卵を作り、塩胡椒で味付けした薄切り豚肉を焼いておきます。
2)「法性寺ねぎ」を小口切りにします(1人前で1本ぐらい:お好みで)。
3)市販の塩ラーメンを、袋に記されているつくり方どおりにつくります。
4)3)に1)と2)の具材をトッピングしたら完成です。
シャキシャキとしているのに、口の中でこなれやすく、この食べ方が一番「九条ねぎ」に似ていることを実感できました。
今回は、ごま油が香る塩ラーメンに合わせましたが、しょうゆ味やみそ味にも合うと思います。
一般にネギは、抗菌作用のあるアリシンという成分を多く含むため、食べることによって消化を促し、鎮静作用や血栓予防効果も期待できるとされています。
また文部科学省の食品データベースによると、葉ねぎ(ネギの青い部分)にはβカロチンやビタミンK、葉酸、ビタミンC、カリウムが豊富です。
これらは油と共に加熱することによって、さらに栄養価が上がります。
緑色の部分が長く、葉ねぎの特徴を持つ「法性寺ねぎ」は、美味しくて健康にも良い食材といえるでしょう。
寒気と暖気が入り混じり、体調を崩しがちな早春。
「法性寺ねぎ」を食べて、この不安定な季節を乗り切りましょう。
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