日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。
そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

岐阜県揖斐川町春日地区で生み出された栽培種のアサツキの球根部分
聞き慣れない「こんぶり」という野菜は、岐阜県揖斐川町春日地区の人々が生み出したと伝わる栽培種のアサツキの球根部分です。
岐阜県の西端に位置する揖斐川町は、西を滋賀県、北を福井県と接している県境の町で、西部には伊吹山をはじめとして1000メートル以上の山々が連なる自然豊かな山間の町です。
雪や鳥獣害に強く、古くから揖斐川町の春地区を中心に定着してきた野菜として「こんぶり」は「飛騨・美濃伝統野菜」に認証されているのです。
収穫時期は5月~6月ということですが、7月以降もしばらくは販売しているようで、2025年7月22日でも買うことができました(確実に買いたい場合はかすがもりもり村リフレッシュ館に電話確認をお薦めします)。

税込み300円の袋の中に、70個入っていました。
袋から出しただけでは特に香りを感じることはありません。

皮をむくと真っ白で、見た目はラッキョウのようです。
長さは2~3センチといったところでしょうか。
皮は乾燥していてペリペリとむきやすいのに、中の球根部分はみずみずしいのが不思議です。
ご飯やお酒のお供にもってこい 独特の辛味がクセになる美味しさ
全く未知の野菜なので、売り場に置いてあったレシピを参考に、いくつか簡単な料理を作ってみました。

根元を切り落として皮をむき、縦に細長く切ったこんぶりを、味噌マヨネーズで和えるだけです。
生で何も付けずに食べると、ツンとした風味があってピリリと辛いのですが、味噌マヨネーズで和えると、味噌の香りと甘み、マヨネーズの酸味とコクが全体を包み込んで、旨みと穏やかになった辛味が調和した美味しいおかずになります。
少量でも白ごはんが進みますよ。
食感はシャキシャキしています。
味噌マヨネーズの代わりに、梅かつお(梅肉とかつお節、しょうゆ、みりん)で和えても美味しそうです。

根本を切り落として皮をむいた「こんぶり」を丸のまま天ぷら生地につけて、3個ぐらいずつまとめて油で揚げるだけです。
弱めの中火で4分ぐらい揚げれば、中にしっかりと火が通ります。
食感がホクホクして、辛味はほとんどなくなりますが、若干苦味を感じるようになるので、大人の味だと思います。
少し塩を付けながら、冷酒と一緒にかじりたい一品ですね。

売り場のレシピに「味噌やしょうゆ、梅肉で漬けると(冷蔵庫で)長期保存できる」と買いてあったので、ジャムの空きビンにしょうゆダレと一緒に入れて1週間ほど漬けてみました。
少し甘めにしようと思い、漬けダレは、しょうゆと酒、みりん、砂糖を4:2:2:1ぐらいの割合で混ぜ合わせ、500ワットの電子レンジで2分ほど加熱してから冷ました状態にして、漬け込みました。
食べてみると、辛味と風味が少しまろやかになっていて、漬けダレには、旨みと食欲をそそる香りが溶け込んでいました。
歯応えは、生のままで食べるのとあまり変わらないようでしたが、もう少し長く漬けると、少しやわらかくなり、さらに味が深まるのではと推察します。
タレは、焼いた肉にかけて食べても美味しそうな気がします。
古くから薬草の宝庫といわれてきた伊吹山の東麓に位置する揖斐川町春地区で細々と受け継がれてきた味覚「こんぶり」。
今回初めて味わってみたところ、少し辛味が強いですが、見た目が似ているニンニクやラッキョウよりクセがなく、味噌やしょうゆにとても合うと感じました。
その存在と味を一人でも多くの人に知ってもらい、時代に合った調理を考案して食べ続けていくことで、将来にわたって末長く伝えていってほしいなと思います。
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