名古屋の街路樹【千種区・区の南西部を横断するハナミズキの道】名古屋市千種区

かつて、市街地の急速な発展によって「白い街」とも呼ばれた名古屋ですが、道路整備に合わせて街路樹の植栽に注力し、今では、市域における街路樹密度が全国の大都市でトップクラスにまでなりました。
2021年からは、街路樹の大木化や老朽化といった課題を解決し整備を進める「街路樹再生なごやプラン」も始まり、道路空間と調和した街路樹づくりが進められています。
「名古屋の街路樹」では、名古屋市内の、街路樹と街並みが調和した特徴的な風景を取り上げ、その魅力をご紹介していきます。

千種区南西部でハナミズキが植えられている市道の範囲(東西の道)
 ※ハナミズキが植えられているのは、吹上本町千種通線(吹上ホール北交差点〜大久伝交差点)〜葭池大久伝線(大久伝交差点〜春岡二丁目交差点から少し東)〜日進通線(春岡二丁目交差点から少し東〜日進通4交差点)の歩道沿い
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春らしい花姿で区内各所の街路を彩る落葉高木

4月〜5月は、街路樹として植えられている樹木にも花を咲かせる種類が多く、まちなかを通行するのが楽しい時期です。
そうした木々の中からハナミズキを選び、千種区の南西部を東西に走る市道(吹上本町千種通線〜葭池大久伝線〜日進通線)を訪ねてきました。

「古井の坂」交差点近くから南西方面を見たところ

両側の歩道に5〜10メートルおきぐらいに植えられたハナミズキは、ビルの3階ぐらいまで届くほど高い木が多い印象。
歩く邪魔にはならないけれど、ふと道の先まで見通すとやわらかな白やピンクの点描が目に入り、心が癒やされるような不思議な存在感があります。

千種区の木に選定されているハナミズキには、品種によって白やピンクの花があり、街路樹として区内の各所に植えられています。
もともとは、千種区のホームページで見どころとして紹介されていた「春岡通」(南北の道)を目当てに訪れたのですが、すでに花の盛りが過ぎていたようで、春岡通りと交差する東西の道に見ごろの木が多かったため、今回はこちらを取り上げることにしました。
名古屋市内ではほかに、千種区の南に位置する昭和区でもハナミズキが区の木に選定されています。

「古井の坂(こいのさか)」交差点と「大久伝(おおくて)」交差点の間から東方向を見たところ

この辺りは白い花が多いようでした。
東方向を見通せる道路なので、はるか先に、東山動植物園に隣接する東山スカイタワー(※)が見えました。
※名古屋市公式観光情報によると、東山スカイタワーの全長は134メートル。
 標高80メートルの丘に建っているそうです。

「丸山」交差点から西方向を見たところ

丸山交差点周辺は少し高台になっていて、西を見ても東を見ても見下ろす形になりますが、西方面はハナミズキが植えられている距離が長く、「ハナミズキ坂」といった感じで、とてもきれいでした。
よく見てみると、左(南)側に赤系、右(北)側に白系が多いように見えますね。

かわいらしさと優美さを兼ね備えた花

白い花がたくさん咲いた高い株

ハナミズキは、花が先に咲いて、後から葉が出てくるので、咲き始めは花だけを楽しむことができます。

北米原産のハナミズキが渡来したのは1915年。
1912年に日本(当時の東京市)からアメリカ(ワシントンD.C.)にサクラを贈った返礼として、贈られてきたのがハナミズキだったそうです。
古くから日本に自生するヤマボウシに木の様子や花の形状がよく似ていることから「アメリカヤマボウシ」と呼ばれることもあります(ハナミズキとヤマボウシは共にミズキ科の近縁種)。
見分け方としては、開花期(ハナミズキは4月中旬〜5月上旬ごろ、ヤマボウシは5月中旬〜6月上旬ごろ)や、葉が出るタイミング(ハナミズキは花が先、ヤマボウシは葉が先)、花びらの形(ハナミズキは先端がくぼんでいる、ヤマボウシは先端がとがっている)が挙げられます。

花が咲きそろった株

花が咲きそろうと、少しずつ葉が出てきます。

白い花を下から見上げたところ

花は比較的高いところで咲くので、裏側を見上げることが多くなります。

様々な表情を見せる白い花たち

ハナミズキは、一般に花びらと認識されている外側4枚が総苞片(そうほうへん=花を包んで保護している葉)で、本当の花は直径5ミリほどと小さく、中央に20個ほど集まっています。
上の写真のうち、上2点は中央部にある本当の花が開花している状態で、下2点はつぼみの状態です(よく見ないとわかりません)。

赤い花がたくさん咲いた株

濃紅色の花は、遠目に紅葉のように見えます。

薄紅色の花が咲き葉が出始めた株

下から見上げることしかできないので少しもどかしいですが、薄紅色の花は花びら(総苞片)のグラデーションが美しく、若葉との組み合わせとも相まって、一重咲きのバラのようにも見えます。

赤い花を下から見上げたところ

赤系の花は、色の濃淡によって雰囲気が異なり、違う種類の花のように見えたりもしますね。

様々な表情を見せる赤い花たち

上の写真のうち、上2点は中央部にある本当の花が開花している状態で、下2点はつぼみの状態です。
こうしてクローズアップしてみると、総苞片が中央の本当の花を大切に守っているように見えて、優しい気持ちになります。

今回歩いたのは、片道約2キロほどでしょうか。
ゆるやかなカーブや坂もありますが、白やピンク、深紅のハナミズキの並木が途切れることなく続く道でした。
日当たりや空気の流れが違うからか、場所によって花の咲き具合も少しずつ違っていて、急に満開の株に出合えたり、葉がたくさん出ている株があったり。
また、高い木を見ながら歩いたからか、気分が大らかになり、とても気分よく歩くことができました。
秋の紅葉も美しいということなので、こちら方面に用事があるときには積極的に通ろうとか、用事がなくても歩きに来たりしようかなと思いました。

※掲載情報は公開日時点のものとなります

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この記事を書いた人

名古屋生まれ、名古屋育ち。
季節の移り変わりを観察するのが大好きなアラフィフ世代。新聞記事制作や、出版社にてガイド本等の制作経験あり。
現在は、旅や町ネタに関する記事を執筆しています。観光や販促のお手伝いも。

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