かつて、市街地の急速な発展によって「白い街」とも呼ばれた名古屋ですが、道路整備に合わせて街路樹の植栽に注力し、今では、市域における街路樹密度が全国の大都市でトップクラスにまでなりました。
2021年からは、街路樹の大木化や老朽化といった課題を解決し整備を進める「街路樹再生なごやプラン」も始まり、道路空間と調和した街路樹づくりが進められています。
「名古屋の街路樹」では、名古屋市内の、街路樹と街並みが調和した特徴的な風景を取り上げ、その魅力をご紹介していきます。

北区の南部の市道を彩るサルスベリ並木
夏の炎天下で、ひときわ鮮やかな花を咲かせる街路樹にサルスベリがあります。
中国南部原産とされるミソハギ科の亜高木で、漢字で「百日紅」と書くように、開花期は7月ごろから9月ごろの約3カ月間にわたります。
一つひとつの花は一日花ですが、次々と花が付くために、ずっと咲き続けているように見えるのだそうです。
今回は、北区南西部にある名城公園から東方1キロ弱のところにあるサルスベリ並木を訪ねてきました。
※本記事中の写真は全て2025年8月9日に撮影したものです。

国道41号の「清水四丁目」から東方向に、約1.5キロにわたってサルスベリ並木は続いています。

「清水四丁目」から少し東に進んだ「清水五南」から西方向を振り返ると、市道・柳原清水町線の両側の歩道に植えられたサルスベリと、国道41号の上空を走る名古屋高速がよく見えます。

この市道・柳原清水町線に植えられているサルスベリは、西部は赤とピンクの花、東部はほぼ赤色の花なのですが、ただ1本だけ、名古屋市立大杉小学校の北東角に白い花のサルスベリが植えられていて、よく目立ちます。

道の両側を彩る赤いサルスベリの並木が壮観です。
このエリアは「鈴蘭通商店街」となっていて、スズランの花がデザインされた街灯がかわいらしいです。

一つ前の写真を逆方向から見たところですが、やはり赤い花の並木に圧倒されます。
サルスベリ並木は、東西だけでなく南北にも

東西を走る市道・柳原清水町線のサルスベリ並木の真ん中より少し西寄りにある「大杉町4」から南下する市道・大杉杉村町線も、サルスベリ並木が見事な道です。
「大杉町4」から、名鉄瀬戸線の高架手前にある「尼ヶ坂駅北」交差点まで、わずか400メートル弱の距離ですが、赤、白、ピンクのサルスベリがバランスよく植えられています。

大杉杉村町線を少し南下すると、名鉄瀬戸線の高架がよく見えます。
散策時にちょうど電車が通りましたので、撮影してみました。
高架の向こう側に、片山神社と尼ヶ坂公園の緑も見えて、絵になる風景ですね。

先ほどの東西の道には、白い花が1本だけでしたが、この南北の道では白い花の木が何本もあります。
風が吹くと、花びらがヒラヒラと舞い散って、ひととき暑さを忘れて見とれてしまいました。

少しサルスベリの木に近寄ると、枝の先に小さな花が房状に集まって咲いている様子がわかります。
これぐらいの距離では、一つひとつの花の形状まではわかりません。

さらに近づいて一つひとつの花をよく見てみると、フリル状の花びらが6枚、真ん中に見せかけのオシベが固まっていて、その周りに長いメシベが1本と、同程度の長さの本当のオシベが6本あるのがわかります。
真ん中にある見せかけのオシベは、生殖能力はないけれども虫の食餌となる花粉を出して、虫をおびき寄せる役割を持っています。
そうして寄ってきた虫の身体に、生殖能力がある本当のオシベの花粉を付けさせてメシベに受粉させるのだそうです。

花の形状が独特なサルスベリですが、つぼみと実の区別がつきにくい木でもあります。
実の方は熟すに従って黒っぽくなっていきますが、夏の間はどちらも同じぐらいの大きさの緑色の球体なので、近づいてよく見ないと判別できません。
本当に面白い木です。
一つひとつはたおやか花なのに、猛暑に負けずに燦然と咲き誇るサルスベリの花たちを見て、優しく勇気づけられる心地になりました。
ゆっくりと街路樹を眺めながらの散策は、心身のリフレッシュにお薦めです。
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