日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。
そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

(新城市内の産直店で購入・「八名丸里芋」のシールが貼ってありました)
旧八名郡八名村(現・愛知県新城市一鍬田地内)発祥の丸くて食味の良いサトイモ

少し大きめで、ごろごろと丸っこい形。
秋になると恋しくなる、甘辛く味付けされた根菜類の煮物。
その具材としてぱっと思いつくものの一つにサトイモがあります。
ホクホクしているのに粘りのある質感と、ほのかな甘みが独特な食味となって、主役級の存在感を放ちます。
日本へは稲作が始まる前の縄文時代に渡来し、縄文時代には主食だったという説もあるほど、馴染みのある野菜です。
親いもを囲むように子いも、孫いもがたくさん育つため、豊作や子孫繁栄を象徴するめでたい食べ物として、正月や節句などで使われることも多いようです。
中でも、「あいちの伝統野菜」に選定されている「八名丸さといも」は、形がまん丸で、やわらかく粘り気があるのが特徴で、なめらかで甘味を感じる食味が魅力とのこと。
収穫期は秋で、その年の気候によって変わるようですが、大体10月から12月が旬だそうです(早いときは8月中旬に産直店に並ぶことも)。
生産地域の愛知県新城市では、生産の振興とブランド化への取り組みが進んでおり、愛知東農業協同組合が商標権者となって「八名丸里芋」などの名義で商標登録もされています。
JA新城営農センターによると、「八名丸里芋」部会に所属している生産者は70人弱で、豊橋や名古屋へも出荷はしているそうですが、一般のスーパーにはなかなか出回らないとのこと。
購入は、新城市内の産直店がお薦めです(とはいえ、事前に店舗に電話確認をした方が良いです)。
クセになる、ねっとりとした感触と自然な甘み
サトイモは、イモ類の中で最も低カロリーとされ、食物繊維が豊富。
またビタミンB6や、カリウム、マグネシウム、亜鉛、銅といった多彩なミネラル類を含みます。
また、ぬめりの成分はグルコマンナン(水溶性食物繊維)やガラクタン(多糖類)などで、腸内環境を改善させたり、血中コレステロールを抑える働きがあるとされており、健康機能野菜としても期待されています。
【ぬめり取り】
※ぬめりを取ると調理しやすくなりますが、栄養素は若干減ります。
味に違いは出ないようですので、自己判断でお願いします。
1)皮をむいたサトイモをボウルに入れて塩をまぶします。
2)30秒ほどもみ込んでから水で洗い流し、水気を取ります。
サトイモといえば、その美味しさが際立つのは煮物ではないでしょうか。
以下に煮物の調理例をご紹介します。

まずは、八名丸さといもを購入した産直店の売り場に貼り出されていたレシピを参考に作ってみて美味しかった「そぼろあん煮」です。
1)しょうゆ、みりん、水を1:2:10の割合で入れて煮立たせた鍋に、皮をむいて4等分に切った八名丸さといもを入れ、フタをして15分ほど煮ます。
2)ボウルに入れたひき肉※に、砂糖、しょうゆ、片栗粉を2:2:3の割合で混ぜ合わせて、八名丸さといもを煮ている鍋に加え、ささっと混ぜます。
3)時々かき混ぜながら3分ほど加熱して、全体にとろみがついたら出来上がりです。
※ひき肉は、コッテリ仕上げたい場合は豚肉、あっさりさせたいなら鶏肉(胸)がお薦めで、量はお好みでいいと思います(写真は豚ひき肉で作ったものです)。
ねっとりとしたサトイモに甘辛いそぼろがからみつき、いつまでも口の中に入れておきたいような、しみじみとした美味しさがクセになりますよ。

次は「鶏と根菜の焚き合わせ」です。
1)砂糖、酒、しょうゆ、みりんを煮立たせ、一口大に切った鶏肉を入れます。
2)鶏肉に火が通ったら、食べやすい大きさに切った根菜類と戻した干しシイタケ、シイタケの戻し汁を加えてざっくり混ぜ、全体に煮汁を行き渡らせます。
3)具材がヒタヒタになるぐらいまで水を加え、落としブタをして煮込みます(目安は20分ぐらい)。
※しっかりと味を染み込ませたいなら、一度冷まして、食べる直前に再度温めるといいようです。
組み合わせる根菜は、ニンジン、ゴボウ、レンコンが味や香りの相性が良いようです。
栄養価も高くなりますので、たくさん作ってたくさん食べたいですね。
ほかに、よく洗って皮ごとレンジで加熱して(または蒸し器で蒸して)から、皮をむいて(手で簡単にむけます)生姜醤油や味噌につけて食べる「きぬかつぎ」や、下ゆでしてからおでんの具にしても美味しいです。
お酒のつまみには、レンジで加熱して皮をむいてから一口大に切り、片栗粉をまぶして揚げ焼きしたものも、なかなかいけますよ。
食物繊維や多彩なミネラルが含まれるサトイモは、健康や美容にも良く、食べるときの満足感が大きいのに低カロリーと、身体にうれしい野菜です。
昔から親しまれてきたサトイモを、現代の多様な調理方法で楽しみながら、秋の恵みを堪能しましょう。
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