日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。
そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

根の部分は約45センチ、葉の部分は約55センチ(一番太いところの直径は10センチ弱)あった
徳重地区(現・名古屋市緑区)発祥の折れにくく煮崩れしにくいダイコン
長い夏、短い秋を越えて、冬らしく寒い日が増えてきました。
外から帰ってきて、冷えた身体に温かい煮物やおでんが恋しい時期の到来です。煮物やおでんの主役級の野菜といえば、大根が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
名古屋市緑区内の徳重地区を発祥地とする「徳重だいこん」は、昭和20年代ごろから昭和50年代まで地区内で盛んに栽培されていましたが、都市化や生産者の高齢化に伴って一度は生産が途絶えてしまったのだそうです。
ところが近年、区内の農家さんの農業用冷蔵庫に保管されていた種子が見つかり、地元のJAや名古屋市農業センターなどの尽力により復活させることに成功。
2023年3月には「あいちの伝統野菜」に追加選定されました。
徳重だいこんの特徴は、根の部分の形状は中円形筒形で、葉は立性、身がしっかりしていて火を通しても煮崩れしにくいこと。長持ちで折れにくいことから、かつては東北や北海道まで出荷されていたそうです。
旬は12月~1月とされています。
そんな徳重だいこんを、簡単に美味しく食べられるレシピを以下にご紹介していきます!
※ほとんどが、インターネットなどに公開されているレシピにアレンジを加えたものや、昔から実家で食べていた料理です。
※一般的にダイコンの根の部分は上の方が甘く、下の方が苦味や辛味が強いとされていますので、サラダや浅漬けなどには上部を、風呂吹き大根など素材の味を味わう料理には真ん中を、味付けの濃い煮物には真ん中より少し下の部分を、辛味が欲しい薬味としては最下部を使うことをお薦めします。

JAみどり徳重土曜朝市で買った新鮮な徳重だいこんを見て、まずやってみたいと思ったのは、素材の味を楽しめて身体もあったまる「風呂吹き大根」でした。
少し時間はかかりますが、作り方は意外と簡単です。
1)真ん中辺りの一番美味しそうなところを3センチぐらいの厚さに切って皮をむき、断面に、十字型に切り込み(深さ6~7ミリぐらい/表も裏も)を入れます。
2)ダシ用の昆布と水を入れた鍋で30分ぐらい煮ます(水分が減ったらお湯を足しますが、基本はほったらかし)。
3)ダイコンが若干半透明になってすっと竹串が通るようになったらお皿にとり、たっぷりの甘味噌とカラシを少量のせて出来上がり。
※甘味噌はお好みで調合しても良いし、市販品でも美味しいです。カラシの代わりに柚子の皮をおろしたものをのせても香りが良くてお薦めです。

名古屋市緑区のホームページ内の、徳重だいこんを紹介しているページに掲載されていた「とろーりチーズの大根ステーキ」を参考に、少しアレンジして作ってみました。
1)風呂吹き大根と同様に、3センチほどの厚さに切ったダイコンの皮をむき、断面に格子状に切り込み(表も裏も)を入れます。
2)バターとオリーブオイルを適量フライパンに入れて加熱し、バターが溶けてきたらダイコンを入れます。
3)フタをして両面に焼き色が付くまで蒸し焼きにしたら、酒、みりん、麺つゆを回しかけ、煮からめます。
バターのコクと、みりんの甘み、麺つゆのうまみが絶妙に溶け合ったソースはクセになる味わいで、しっかりとした食感の徳重だいこんとよく合います。
※やわらかくジューシーな食感にしたい場合は、焼く前に下ゆでしてください。

上の「バターしょうゆ焼き」の仕上げに、火を止めてからお好みのチーズをのせて、フタをしてしばらく待つと、チーズが溶けて、マイルドな味わいに仕上がります(写真は、「モッツァレラとろけるスライスチーズ」を2枚のせたもの)。

5ミリほどの厚さのイチョウ切りにした徳重だいこんと、放射状に8等分に切った油揚げを、水と白だし、みりんと一緒に煮ます。
具材を薄く切っているので、火が通るのが早く、ダイコンが半透明になったらでき上がりです。
当然ながら(!?)全く煮くずれることなく、美しく仕上がりました。
あと一品というときにサッと作れて、しみじみと美味しいお手軽な煮物です。
生も、栄養価の高い葉っぱも美味しく食べましょう!
加熱しても美味しく、食物繊維やミネラルが豊富なダイコンですが、生の状態ではジアスターゼというデンプンを分解する酵素を多く含むため、胃腸の調子を整えるために生食もお薦めです。
特に「大根おろし」にすると、食物繊維やミネラル類が増量するため、様々な料理に大根おろしを添えると身体に良さそうです。
また、葉は緑黄色野菜に分類されるほどβカロテンが豊富で、止血と骨の健康に作用するビタミンK、DNAやアミノ酸の合成に関わる補酵素である葉酸、ビタミンCなども多く含みます。
ここからは、根の部分の生食や、葉を美味しく食べられるお薦め料理をピックアップしてご紹介します。

箸休めに大活躍する浅漬けです。
1)徳重だいこんの真ん中より少し上の部分を、食べやすい短冊状に切り、少量の塩と砂糖をふって、もんでおきます。
2)梅干しから梅肉をこそげ取り、包丁などで細かくたたいて、かつお節、みりん、しょうゆと合わせて和え衣を作ります(それぞれの分量はお好みですが、かつお節は多めにすると美味しいです)。
3)ダイコンから水分が出てきたら絞って水気を捨て、2の和え衣と合わせます。
消化が良くて食欲も湧くし、ご飯のお供に最高です。
ここからは、葉を使った料理です。
立性の徳重だいこんの葉は、損傷が少なく、余すことなく使えるので、勝手にお得感を感じてしまいます。生よりゆでた方が扱いやすいので、ゆでて刻んだものを使っていきます。
※ゆでると、ビタミンCや葉酸は半減しますが、βカロテンやビタミンKなどは増えます。

1本の徳重だいこんから採れた葉をサッとゆでて、約5ミリ幅に刻んだもの。500ミリリットルの容器1杯弱ぐらいの量になりました。
買ってきてすぐにここまでやっておくと、使いやすくて、後が楽です。

いわゆる「菜飯(なめし)」のおかかバージョン。
ゆでて刻んだ葉に、かつお節と、さとう少々、しょうゆを合わせ、温かいご飯に混ぜ合わせたら出来上がりです。
分量は適当ですが、目安を記すとしたら、ご飯は1.5合、葉は3/4カップ、かつお節は約3グラム、さとうは小さじ1弱、しょうゆは大さじ2ぐらい(お好みで調整してください)。
大根菜のシャキシャキとした歯応え、独特のほろ苦さとうまみを、おかかがうまくまとめてくれます。
湯豆腐や茶碗蒸しなどと合わせて献立を組めば、冬のほっこり和食セットになりますね。

こちらは、常備菜にお薦めのメニューです。
1)食べやすいように細かく切った豚肉をごま油で炒めます。
2)肉に火が通ったら、ゆでて刻んだ葉を炒め合わせ、さとう少々、酒、みりん、しょうゆで味付けます。
3)溶き卵を回しかけてざっくりと混ぜ、火を止めます。
こちらも、食材や調味料の分量はお好みで調整を。彩りも栄養のバランスもよく、お弁当のおかずにも助かる一品です。
以上、肉質がしっかりとしていて、立性の葉を持つ徳重だいこんに合いそうな簡単メニューをご紹介しました。
ほかにも、サラダやぬか漬け、切り干しなど、生のダイコンや葉の用途はたくさんあります。加熱メニューも、おでんや豚汁、磯辺揚げなど、作ってみたい料理が目白押し。
栄養もあって美味しい徳重だいこんをたくさん食べて、寒い冬を乗り切りましょう!
徳重だいこんは、名古屋市緑区内の産直店などで販売しています(入荷状況は要確認)。
※含有栄養分に関しては「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」などを参考にしています。
※掲載情報は公開日時点のものとなります。