日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。
そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

岐阜県揖斐川町春日地区で作り続けられている
大型のきゅうり
キュウリといえば、生のまま冷やしてサラダや浅漬けにして味わうことが多い夏野菜ですが、果肉が厚くて加熱料理にも適した大型のキュウリがあることをご存じでしょうか。
岐阜県の西端に位置する揖斐川町の春日地域で栽培されている在来種の「春日きゅうり」で、「飛騨・美濃伝統野菜」にも認定されています。

収穫時期は7月~9月。
熟すにつれて色が緑色から黄色、オレンジ色へと変わっていきます。
緑色のものは生食や漬物、黄色やオレンジ色のものは加熱料理に適しているそうで、売り場には様々な色のものが並んでいました。
およそのサイズ感は、長さが25センチ前後、重さが500~600グラムぐらいあり、「わっ、大きい!」が第一印象でした。
生も加熱してもイケる
地元の人は味噌汁が定番
「普通のキュウリより青臭さが少なく、やさしい味わい」で、生食も加熱料理も美味しいという春日きゅうりを使って、様々な調理法を試してみました。

まずは緑色の実を使って、昆布だしと少量のさとう、七味で浅漬けを作りました。
大型キュウリなので種は硬くて食べられないため取り除きましたが、皮は気になりませんでした。
クセのない、やわらかな果肉が楽しめました。

浅漬け同様、緑色の実の種を取り除いて、皮付きのまま食べやすく薄く切って塩もみし、ツナ缶とマヨネーズ、黒コショウで和えるだけです。
手軽に作れて食べやすい箸休めの一品となりました。

縦半分に切った「春日きゅうり」の種を取り除いて、塩をもみ込んでポリ袋に密閉した状態で1~2時間置き、出てきた水分をよく絞ってキッチンペーパーでよく拭き取り、味噌でコーティングしたら再び密閉できるポリ袋に入れて冷蔵庫で寝かします。
2日ぐらいで漬かりますので、薄く切って食べます。
味噌は何でもいいのですが、今回は合わせ味噌で漬けたので、きれいな黄金色に仕上がりました。
甘めが好きな人は、味噌にさとうを加えるといいと思います。
ちびちびと1週間ほど食べ続けたのですが、最後の方は少し皮が気になりましたので、下拵えの段階で、ところどころ皮をむいておくと、食べやすいと思います。
※当コラムの2023年8月にご紹介した「かりもり」の味噌漬けとほぼ同じ手順ですが、「春日きゅうり」の方が漬かりやすいので、全ての工程で時間を大幅に短縮しています。

「春日きゅうり」の産地の人がよく食べる食べ方として教えていただいたのが味噌汁だったので、作ってみました。
黄色の「春日きゅうり」の皮をむいて薄く切り、サツマイモとネギ、油揚げと合わせたのですが、キュウリ特有の青臭さもなく、トロッとした食感なのにさっぱりとしていて、美味しくいただきました。

煮物にも挑戦してみました。
黄色の「春日きゅうり」の皮をむいて縦半分に切り、種を取り除きます。
7~8ミリぐらいの厚さに切った「春日きゅうり」と、熱湯で油抜きをして4つに切った油揚げを、煮立たせただしと酒、みりん、しょうゆ、さとう少々で煮含めます。
じゅわ~っと味がしみて、とっても美味しかったです。
仕上げにゆるめの水溶き片栗粉を加えて煮立てて、冷やして食べても美味しいと思います。

次は、炒め物にも挑戦。
まずはごま油を熱したフライパンでお好みの豚肉を炒めて取り出し、次に薄切りにしたタマネギと、拍子木切りにした「春日きゅうり」を炒めます。
野菜が半透明になったら豚肉をフライパンに戻して炒め合わせ、酒とみりん、オイスターソースで味付けします。
タマネギの甘みと「春日きゅうり」のとろみ、豚肉のコクがマッチして、ご飯が進むおかずになりました。
仮にもキュウリを加熱調理するなんてと、最初は少し戸惑いもありましたが、実際に様々な料理を作って食べてみて、すごく使い勝手が良く、食欲が衰えがちな夏に食が進む貴重な食材であることがわかりました。
この存在と味を一人でも多くの人に知ってもらい、食べ続けていくことで、「春日きゅうり」が将来にわたって末長く伝わっていってほしいと思います。
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