東海さすらい旅日記【愛知県東三河】東三河の桜めぐり 山里の桜風景・奥三河編

 愛知県東三河地方は南北に長く、一つひとつの季節が長い。1月には伊良湖岬で菜の花が咲き始めたと思うと、茶臼山ではスキーがハイシーズンを迎えている。春も同様に、地域によって見ごろのタイミングが2週間ぐらい違う。
東三河の桜は2度楽しめる。豊川流域の南部では散ってしまったと思っていると、奥三河ではぼちぼち見ごろですよと知らせが入る。
そんな山里・奥三河の桜風景。

 4月8日朝、東栄町から豊根村へ。人気(ひとけ)のない時間帯を選んでいるのもあるが、何より朝の光を浴びる桜の姿を見たい。東栄町の中心部を流れる大千瀬川沿いの桜もようやく見ごろを迎えていた。遠くに見える山の姿、静かな清流の川の姿と淡い桜色がよく似あう。

 廃校活用施設「のき山学校」の桜。もうここでは入学式は行われないが、かつてはこの時期には主役だったであろう桜たちは今でも現役だ。木造校舎と桜の風景は日本人の心に残る風景と思う。

 東栄町からさらに奥の愛知のてっぺん、豊根村へ。まだ朝7時過ぎ、朝の光は残っている。温泉施設のそばにある熊野神社には2本の桜。「お宮のサクラ」として鳥居を挟み、圧巻の姿のしだれ桜とエドヒガン桜がウェルカムゲートのように出迎えてくれる。しだれ桜の姿ってまさに春のアートだなと思いながら。

 その週末の4月12日、再び奥三河へ。夜明け前に家を出て1時間半。設楽町名倉地区に6時に着いた。朝もやのなか「清水のコヒガンザクラ」が見ごろを迎えていた。愛知県内では、ここの桜並木が一番好きだ。一番美しいかどうかはそれぞれの感じ方があると思うが、人工物がほぼない山間いの川に沿って静かに佇むこの桜並木の姿が好きだ。

 朝もやは偶然。雨上がりの朝、地元の人にはあたり前の風景かもしれないが、そんなことは知らずの偶然の出会いは幸運だった。これまで何度も来ているが、この風景に出会ったのは初めて。水墨画に描きたくなるような朝もやに霞む桜の姿はいかにも日本的だ。川沿いに1.4kmにわたって続く桜並木を端から端まで歩いたのは初めて。全てを歩いて、対岸にも桜が咲いていることを初めて知った。これも新たな出会い。

 8時を過ぎたあたりからようやく朝もやは晴れ、山里らしい青空に。朝もやの桜もいいが、青空と桜並木のコントラストもやはり美しい。白い雲たちが、桜に呼応するかのように浮かんでいた。

 水たまりに映る姿が撮れたのも幸運だった。朝もやと水たまりリフレクション。この2つの桜風景だけでも、夜明け前からここに来た甲斐はあった。

 気づいたら4時間もいてしまった。ひとつの桜スポットでこんなにもいたのは初めてのこと。名倉地区を出て、この日も再び豊根村へ。途中で見つけた津具地区の川沿いに咲く桜。ここだけではなく、おそらく名もない桜があちこちで咲いているのだろう。

 豊根村のみどり湖には、湖畔に咲くしだれ桜。まさに緑色の湖面に、桜色が映える。

 みどり湖を越え、東三河最奥部の富山(とみやま)地区へ。富山はかつて日本一小さい村と言われた地域。そこにあるバンガロー村に咲き並ぶしだれ桜の姿。静かな山里の日本のふるさと的風景に心癒される。

 富山を出て帰路へ。道中に現れた立派なしだれ桜、集落を見下ろす桜風景。奥三河の山里の桜めぐりは名所だけに限らないところがいい。

■ほの国東三河めぐり
 ほの国東三河ではこれからも春の花は続く。公式インスタグラムでは毎日、旬な情報が発信されている。
https://instagram.com/honokunikanko

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この記事を書いた人

愛知県豊橋市生まれ。
出版社、シンクタンク勤務を経て、現在は一般社団法人ほの国東三河観光ビューローのマーケティングディレクター。旅人総研代表。愛知大学地域政策学部非常勤講師(観光まちづくり論)。
東海地方を中心に、地域を盛り上げる観光事業や集客計画など、手がけてきたプロジェクトは数知れず。生まれ育った愛知県東三河に腰を据え、地元活性のために奔走する。また、旅人総研代表として、講演やフォトラベライター(旅するカメラマンライター)などの個人活動も実施。旅と写真とロックを愛する仕事人で、公私ともに、さすらいの旅人として各地を巡っている。

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