日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。
そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

やわらかさとえぐみの少なさが特徴のタケノコ
タケノコは、春に竹の地下茎から芽吹く若い茎で、地上に顔を出しかけたところを収穫し、米ぬかを入れたお湯で1〜2時間ほどゆでてアクを抜いて食べます。
一旬(いちじゅん=10日)で竹になるといわれるほど成長が早いため、旬の時期が短い、貴重な春の味覚です。
「飛騨・美濃伝統野菜」を紹介するホームページによると、「瀬戸の筍」は、約270年前、苗木藩(なえきはん)に輿入れした島津藩の姫が持参した竹を、当時の瀬戸村の庄屋が木曽川縁に栽植し、一帯に繁殖したのが始まりのようです。
日当たり良好で肥沃な赤土土壌で、霧が立ちやすいという環境と、きめ細やかな栽培管理が、太くてやわらかく、えぐみが少ない良質なタケノコを生んだのだということです。

ゆでて皮を取り除くと、可食部は結構小さくなってしまいます。
Lサイズで高さ18センチ(皮付きの生では34センチ)、Mサイズで高さ14センチ(同24センチ)、Sサイズで高さ9センチ(同18センチ)ほどになってしまいました。

4月上旬から5月上旬の午前9時ごろから午後2時ごろまで(火曜と土曜定休)市内瀬戸地区で開いている直売所。
タケノコの大きさはSサイズから3Lサイズに分けられていて、1キロ単位で販売していました。
販売していた女性によると「大きさは好みだけど、皮が黄色っぽいタケノコが比較的やわらかくて美味しい」とのこと。
自分で選んでもいいし、希望を伝えれば、販売員の方に選んでももらえます。
こちらでは、MサイズとLサイズを1本ずつ、やわらかそうなものを選んでもらって買いました(米ぬかは無料サービスで付けてくれました)。
※年によって開業期間は流動的なので、確認が必要です。
(今年は早めに終わってしまう可能性が高いようです)

JR中央本線「中津川」駅前に6階建ての「にぎわいプラザ」があり、その1階部分にある「にぎわい特産館」では地域の特産品を販売していて、店の奥の方に進んだところにある産直コーナーでも、旬の時期には朝採れの「瀬戸の筍」を売っていました。
生の状態のものは米ぬか付きで、ゆでたものも売っていたので、試しやすいですね。
店頭に並んでいたのは、先に訪れた直売所でいうSサイズのものが多いようで、数本購入しました。
※こちらでの「瀬戸の筍」販売も旬の時期限定なので、確認が必要です。
和食にも中華にも合う! 歯応えと香りがたまらない春の味覚
タケノコには不溶性の食物繊維であるセルロースが多いため、コレステロールの吸収を抑えたり、腸内の有害物質を体外に排出する働きがあり、便通を促す効果があるといわれます。
また、カリウムも豊富で、旨み成分もバランスよく含んでいます。
新鮮なタケノコには独特な香ばしさや甘みがあり、旬の時期にはぜひ食べたい野菜です。
今回は、太くてやわらかく、えぐみの少なさが特徴の「瀬戸の筍」を購入できたので、作ってみて美味しかったメニューを以下に紹介します。
※いずれも、縦半分に切って、米ぬかを入れたお湯で2時間ほどゆでて皮をむいたものを使用しています。

タケノコ料理と聞いて、真っ先にタケノコご飯を思い浮かべる人は多いと思います。
生の具材と合わせてご飯を炊く「炊き込みご飯」と、炊き合わせた具をご飯に混ぜ込む「まぜご飯」がありますが、今回は手軽にできる混ぜご飯を作ってみました。
具材はシンプルにタケノコと油揚げだけというのもいいですが、今回は少しボリュームのある感じにしたかったので、タケノコ、にんじん、干しシイタケ、鶏肉、油揚げの五品目にしました。
1)小さく切った具材を小鍋に入れて、酒、みりん、しょうゆ、シイタケのもどし汁に、さとうと塩少々を加えて、かき混ぜながら煮ます。
2)具材をかき分けたときに煮汁がじわっとにじむ程度まで煮詰めたら火から下ろします。
3)温かいご飯に混ぜ込んだら出来上がり。
知人に振る舞ったら、タケノコは適度な歯応えがあるけど噛み切りやすく、ふわっとタケノコの風味と甘みがあって美味しかったとのことでした。

瀬戸たけのこ直売所や、にぎわい特産館で、簡単にできる料理を聞いたときに、皆さん口をそろえて最初に名前が挙げたのが、みそ汁でした。
新しいものなら、生のものをそのまま入れるとも聞きました。
産地ならではのお話ですね。
今回は朝採れを買いましたが、帰宅は夜になってしまったので、ゆでてアクぬきしたものを使いました。
適当に薄く切ったタケノコと油揚げ、ミツバを具に、だし汁と白みそで仕上げましたが、上品な味わいで美味しかったです。

タケノコのおかずで比較的作りやすく自分もよく作るのが、この若竹煮です。
春が旬のワカメとタケノコを炊き合わせるのですが、今回は彩りにサヤエンドウも加えてみました。
1)酒とだし汁、食べやすく切ったタケノコを中火で15分くらい煮ます。
2)さとうとみりん、薄口しょうゆ、ワカメ(乾燥でも生でも可)を加え、一煮立ちさせたらサヤエンドウを加え、さらに一煮立ちさせます。
3)サヤエンドウの色が鮮やかになったら火を切り、しばらく置いたら出来上がり。
食べる直前に再度温めてもいいし、冷めたままでも美味しいです。
調味料の分量はお好みで、味見しながら調整するといいです。

春巻も新鮮なタケノコがたくさん手に入ったら、作ってみたいメニューのひとつです。
揚げたてのパリパリとした皮に、旨みたっぷりの具の中でも存在感抜群のタケノコの歯応えと、じんわり染み出す甘みがたまりません。
1)タケノコとにんじん、戻した干しシイタケを細長く切って、鶏ひき肉と一緒にフライパンで炒め合わせ、塩コショウをふりかけます。
2)お湯で戻した春雨を4〜5センチぐらいの長さに切ってフライパンに加えてざっと混ぜます。
3)酒、さとう、しょうゆ、シイタケのもどし汁を加えてかき混ぜ、弱火で煮ます。
4)水溶き片栗粉を加えてかき混ぜて、全体に一体感が出たら火を止めて冷まします。
5)冷めた具材を春巻の皮で包んで、少量の油で揚げ焼きします。
6)皮がパリッとしてきつね色になったら引き上げて、キッチンペーパーで余分な油を切ります。
揚げたては格別ですよ。
調味料の分量と具材はお好みで。
鶏の代わりに豚ひき肉でもいいし、春雨の代わりにタマネギを入れても美味しいと思います。

チンジャオロースーも、実はタケノコをたくさん使う料理です。
1)タケノコとピーマン、豚肉を細長く切ります。
2)豚肉に酒としょうゆ、片栗粉をまぶし、少し置きます。
3)ごま油を熱したフライパンで肉を加熱します。
4)肉を取り出したフライパンにタケノコを入れて2〜3分炒めたら、ピーマンを加えて、塩コショウをふりかけます。
5)フライパンに先ほどの豚肉を戻し、酒とオイスターソースを加え、炒め合わせます。
6)味を見てさとうを加え、かき混ぜたら火を止めて出来上がり。
※オイスターソースがなければ、お好みの顆粒だしとみりん、しょうゆ、さとうで味付けしても美味しいです。
条件が整うとどんどん伸びて、すぐに竹になってしまうというタケノコ。
最近は、旬の時期に収穫したものを水煮した便利な真空パックも年中出回っていますが、旬の時期に、新鮮な実物を好きなように料理して、リアルに季節を味わうのは、かなりぜいたくな体験ではないでしょうか。
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