東海さすらい旅日記【名古屋市】芸術の秋、「国際芸術祭あいち2025」めぐり①

 愛知での3年に1度の芸術祭「国際芸術祭あいち2025」が始まった。2010年に始まり、今回で6回目。会期は9月13日から11月30日まで。名古屋の暑さを避けたのか、これまでの夏会期から9月中旬スタートの秋会期へと変更になったものの、開幕日からの3連休は、まだ30度超えの残暑が続いていた。主な会場は、愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなかと分散している。まずは、愛知芸術文化センターへ。

 今回のテーマは「灰と薔薇のあいまに」。戦争の惨禍とそれによる環境破壊、そして、その先に見える希望。その「あいま」にあるニュアンスをアートで伝え、来るべき世界を考える。会場に着くと天井吹き抜け空間で出迎える巨大タペストリー。その存在感にまず圧倒される。

 会場に入るとオープンスペースに珊瑚の海。毛糸や布を使って海中の生態系を表現する作品。正面から横から裏側から、それぞれから見る位置での見え方や感じ方も変わる。

 展示室に入るとさまざまなアートが連続で続く。会場全体としてゆとりのある広い空間が使われているのが印象的だ。密集したアートではなく、ひとつ一つが十分なスペースのなかで、それぞれの世界観を表現している。

 巨大な構造物でノアの物語を現代に再構築した「ノアの墓」。

 イラクでの爆発の一瞬の光景を表現した作品。爆発直後の空、爆発で飛び散る瓦礫、そしてその後の静寂。一連の絵に描かれた光景にはその瞬間に生きている喜びが表現され、心に届く。

破壊された博物館で失われた展示物を3Dプリントで再現した作品。そこに蘇った展示物たち。

 その他、いずれの作品もテーマは重く、深い。メインテーマにも繋がる作品たち。ひとつ一つの解説板に目を通し、そこで何を感じるか。

 現代アートは、見た目だけでわかる明快な作品ばかりではない。むしろ、解説板を読むことでしか理解できない場合もある。ただ、その理解によって改めて作品を見つめ直し、そこで作家が伝えたいことや、その作品の意味を知る。特に今回のテーマにおいては、それはとても重要なことで、全てを見終わった後にそれはトータルとして心に重く残る。
 そんな愛知芸術文化センター会場を後に、瀬戸市の愛知県陶磁美術館会場に向かった。(つづく)

■国際芸術祭あいち2025 
 https://aichitriennale.jp/

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この記事を書いた人

愛知県豊橋市生まれ。
出版社、シンクタンク勤務を経て、現在は一般社団法人ほの国東三河観光ビューローのマーケティングディレクター。旅人総研代表。愛知大学地域政策学部非常勤講師(観光まちづくり論)。
東海地方を中心に、地域を盛り上げる観光事業や集客計画など、手がけてきたプロジェクトは数知れず。生まれ育った愛知県東三河に腰を据え、地元活性のために奔走する。また、旅人総研代表として、講演やフォトラベライター(旅するカメラマンライター)などの個人活動も実施。旅と写真とロックを愛する仕事人で、公私ともに、さすらいの旅人として各地を巡っている。

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