日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。
そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

(中津川市内の産直店で購入)
岐阜県中津川市福岡地区で
約400年前から作り続けられてきたトウガラシ

夏から晩秋にかけて、収穫期が長いトウガラシ。
中南米原産とされるトウガラシは、コロンブスによってヨーロッパにもたらされ、そこからシルクロードを経てアジアに伝わり、日本へは16~17世紀に渡来したといわれています。
江戸時代の中ごろから各地で広く栽培されるようになり、食材や薬用のほか、防虫効果や温熱効果を持つ素材としても活用されていたようです。
岐阜県中津川市の福岡地区で400年ほど前から作られてきたと伝わる「あじめこしょう」もそんなトウガラシの一つで、「飛騨・美濃伝統野菜」にも選定されています。
岐阜県の東南端に位置する中津川市の中で、福岡地区は中央西寄り部分に横たわる南北に長いエリアです。
地区の北には標高1595メートルの三界山、西には同1223メートルの二ツ森山がそびえ、エリアのほぼ中央を南北に付知川(つけちがわ=木曽川の支流)が流れています。
福岡地区ではトウガラシのことを「こしょう」と呼んでいて、当地で作られる、細長くクネクネとしたトウガラシが、付知川に生息する「あじめどじょう」に形が似ていることから「あじめこしょう」と呼ばれるようになったと伝わっています。
収穫期は7月から11月ごろで、期間中は、中津川市内の産直店(道の駅など)などで青果を販売していますが、期間外でも、一味や七味、ドレッシングなどの加工品を購入できます(確実に購入するには、事前に電話確認してください)。

「あじめこしょう」の特徴の一つに、一般のトウガラシと比べて細長いことが挙げられます。
今回購入したものは、大体15センチ前後ありました。
店頭に並んでいた袋の中身は、全て緑色のものや全て赤色のもの、緑色と赤色が混在しているものもあり、今回は色が混在している袋を選んで買ってみました。
販売員の女性によると「一番辛いのは、緑色から赤色になりかけのオレンジ色がかった緑色のもの」で、次に緑色、赤色の順とのことでした。
まあ、どれも辛いには変わりないようですが。
強烈な辛みと深い味わい、
食べると身体が温まる
トウガラシは一度に食べられる量が少ないため、栄養分についてはあまり期待できないとされていますが、生の果実100g当たりに含まれるβカロテンが6600mg、カリウム760mg、ビタミンC120mgのほか、うまみ成分であるグルタミン酸は580mg(日本食品標準成分表)あるなど、結構豊富です。
また辛味成分のカプサイシンには、血行をよくして体を温める作用や、唾液分泌量を増やして食欲を増進させる作用、アドレナリンの分泌量を増やして代謝を活発にする作用などがあるとされます。
身体からの食塩要求量を減らす効果もあるとされ、料理の減塩にも役立つようです。
「あじめこしょう」の辛味については、農業専門誌や岐阜県の県産品紹介サイトに「一般的なトウガラシの3~5倍の辛さ」と記されている(中津川市の特産品ガイドブックには「7倍」と紹介されていました!)ほどで、いわゆる「激辛」とされています。
普段、そこまで辛いもの好きというわけでもない自分が、どうやって食べたらその魅力に触れられるのか・・・。
今回「あじめこしょう」を購入した中津川市内の産直店の案内掲示や販売員の女性に聞いた食べ方を参考に、調理して実食してみましたので、以下にご紹介します。

まずは、産直店で「すごく簡単」と聞いた、しょうゆ漬けを作ってみました。
1)洗った緑色の「あじめこしょう」の水気を拭いてヘタを取り、5ミリほどの輪切りにします。
2)小さめのビンに1)の「あじめこしょう」を入れ、ひたひたに浸かるぐらいしょうゆを注ぎ入れて、冷蔵庫に安置します。量によりますが、半日~1日ぐらいで漬かります。
賞味方法は工夫次第で無限です。
まずは温かいご飯にかつおぶしを敷いて、その上にのせて食べたら「うわっ、辛うま~!」と、うなりました。
二口目ぐらいで、じわじわと顔に汗が吹き出し始めるほどの辛さ。
途中でマヨネーズをかけて混ぜながら食べたら、マイルドな辛さがまた良くて、おかわりしてしまいました。
漬け汁のしょうゆにも辛みとうまみが溶け出しているので、湯豆腐にかけたり、チャーハンの仕上げに回しかけたり、ドレッシングに混ぜ合わせるなど、「辛うま」調味料として重宝しますよ。

次は甘めに調合したみそと合わせた「おかずみそ」です。
1)さとう、酒、みりん、麺つゆ、みそを2:2:2:1:2ぐらいの割合で混ぜ合わせて、みそダレを作っておきます(調味料の割合はお好みで、味をみながら整えてください)。
2)上のしょうゆ漬けと同様に切った緑色の「あじめこしょう」をごま油でサッと炒めます。
3)みそダレを入れて、弱めの中火で全体がなじむまで煮からめたら、出来上がりです。
これも、使い方はいろいろですが、ご飯にすごく合います。

産直店で「ネギみたいに刻んでラーメンに入れると美味しい」と教えてもらったので、やってみました。
今回はみそラーメンに、緑色の「あじめこしょう」を細かく刻んでのせたのですが、予想していたより辛味は強くなく、豊かな香りと風味を楽しめました。

肉野菜炒めの具の一つとして入れてみたらどんな味わいになるか、試してみました。
1)ニンジン、タマネギ、キャベツを食べやすい大きさに切り、赤色や緑色の「あじめこしょう」を斜め切りにします。
2)豚肉をフライパンで炒め、火が通ったら、一旦、別容器によけておきます。
3)同じフライパンで1)の野菜類を炒め、塩こしょうを振り入れます。
4)野菜類に火が通ったら2)の肉をフライパンに戻して炒め合わせ、しょうゆを適量加えてざっと混ぜ合わせたら完成です。
食材の分量はお好みですが、今回2人分を作るのに、豚肉約200グラム、ニンジン1/3本、タマネギ1/2個、キャベツ3枚、「あじめこしょう」は4本入れました。
全体的に結構辛くて、2~3口食べたら汗がどっと出てきましたが、口の中が痛くなるほどではなく、適度な刺激とうまみでご飯が進みました。
寒い季節の身体温め食材として活用できるなと思いました。
これから冬がやって来ます。
400年前から大切に栽培され続けてきたトウガラシ「あじめこしょう」をうまく料理に取り入れて、辛うまを味わい、寒さに負けないよう、身体を活性化させていきましょう。
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