旧東海道をめぐろうと桑名駅から海路の入口である旧港へ向かう。駅近くの観光案内所に立寄り、観光マップをもらった。旧港へは徒歩約20分。目的地は旧東海道だったが、マップを見ると気になる観光スポット「六華苑」がある。大正時代か昭和初期なのかおそらくその頃の外観の建物が紹介されている。旧東海道へ行く前に、近代の文化めぐりをしようと心が動いた。

「六華苑」に向かうとその手前にレンガづくりの建物、そして運河らしき水空間が現れた。桑名のまちのイメージはほぼゼロだったが、文化的香りが漂う雰囲気は良い意味で想定外だった。運河の手前には古い建物と赤ポストが設置されたいかにも由緒がありそうな空間。マップには「諸戸氏庭園」とあったが、六華苑に向かう通過点のつもりでいた。ただ、その入り口となる和の建物とその前に見た洋の赤レンガの組合せが気になり、立寄ることに。


庭園に入ると重みのある建物空間。外の光と中の光が建物内部で交差する。明治時代のビリヤード場などは、この邸宅の暮らしぶりを伺わせる。



かつて御殿であった和洋の建物が混ざり、その中央に庭園がある。庭園と建物の関係が面白い。こっちから見る庭園、あそこから見る庭園、庭園から見る建物、自分には見えない仕掛けもあるだろう。




諸戸氏庭園を出ると隣接地に「六華苑」。著名なイギリス人建築家による地元の実業家の旧邸宅。大正時代に完成した洋館も和館も庭園も開放され、内部も見ることができる。外観だけしか見られないと思っていたので、それは意外な文化体験となった。



これらの建物は、国の重要文化財に指定されており、貴重な文化遺産として残されている。庭園も国の名勝に指定されており、建物、庭園ともに価値のある存在。保存状態もよく、当時の雰囲気は十分に残されている。
諸戸氏庭園と六華苑の組合せだけでも十分堪能した。旧東海道めぐりのついでのつもりだったが、これだけを目的に桑名を訪れる価値がある。また、違う季節の庭園も見てみたい。


(桑名めぐり、旧東海道編に続く)