下呂市の飛騨金山へ。同じ下呂市内でも観光地として賑わう下呂温泉とは違い、静かなまちが佇んでいる。下呂温泉からの帰り道の鈍行列車旅。もう夕暮れになってしまったが、飛騨金山のまちをぶらりめぐってきた。

この町へ来たのは何度目だろう。初めは地元のガイドさんの案内でめぐり。2度目は外国人留学生たちと、3度目は日本人のグループでめぐった。そして多分4度目となる今回はひとり旅。確か無人駅だったと思うけど、あまり意識もせず改札を出た。

駅前には歓迎アーチ。飛騨弁で迎えてくれるかと思いきや、よもやの「WELCOME」。なぜ英語なのだろうとか考えてもしょうがない。とにかく歓迎されたのだ。

ゲートをくぐるとかつて街道であったであろう雰囲気の佇まい。旅館風の建物が続き、おそらく宿場町であったことも容易に想像できる。



この町へは何度目かだけど、明確にどこをどう歩いたかを覚えていない。それが、飛騨金山のまちめぐりの魅力だと思う。大人の迷路とでも言える金山名物「筋骨めぐり」はすぐそこなのに、どこにあるのかが明確ではない。

駅においてあった「筋骨めぐり」の地図を片手に端から端まで歩いた。筋骨とは人間の筋や骨のように複雑に絡み合ったようなまちだから、そう呼ばれている。地図がなければ、どこをどう歩いているのかもわからなくなる。

水路を跨ぐ橋。この橋はどこからどこへ行く人がどういう用途で利用するんだろう。そんな不思議な空間が続く。


建物は近い、建物はどうつながっているのか、どうつながっていないのか。入り組んだ狭い道を歩きながら、この不思議な生活空間を感じる。

もう営業していないが、建物と男湯・女湯の看板が残された銭湯。レトロ空間というより貴重な生活歴史博物館。

この路地には光と影がよく似合う。写真をモノクロームにしてみたくなった。

ひととおり歩いて、石段から大きな通りに出た。辺りは暗くなって迷宮に入り込みそうになっていた。大人の迷路を脱出し、少し、ほっとした。

駅に近づくと「SEE YOU AGAIN」のお別れ看板。さっきのWELCOME看板の裏側だ。また会いましょう、飛騨金山。

