かつて、市街地の急速な発展によって「白い街」とも呼ばれた名古屋ですが、道路整備に合わせて街路樹の植栽に注力し、今では、市域における街路樹密度が全国の大都市でトップクラスにまでなりました。
2021年からは、街路樹の大木化や老朽化といった課題を解決し整備を進める「街路樹再生なごやプラン」も始まり、道路空間と調和した街路樹づくりが進められています。
「名古屋の街路樹」では、名古屋市内の、街路樹と街並みが調和した特徴的な風景を取り上げ、その魅力をご紹介していきます。

(赤色の点線=南北に約2キロ)
名古屋市内の街路樹で唯一の「デイゴの道」
夏に花が咲く街路樹を探していて見つけたのが、中区の葵町線の「デイゴの道」。
名古屋市が1986年から始めた「特色ある並木道」づくりの一環として、1991年に整備された並木道の一つです。
※いいやすく省略して「デイゴの道」となっていますが、植えられているのは、夏に鮮やかな赤い花を咲かせるアメリカデイゴです。
中区の東部を縦走する市道「葵町線」は、「鶴舞公園前」交差点から「広小路葵」交差点までの約2キロ。
その中央分離帯に植えられたアメリカデイゴは、北端で接続する東区の国道153号と合わせて、最盛期は90株近くあったようですが、今では東区側のものはわずかしか残っておらず、全体で60株程度だそうです。
といっても、同区間の中央分離帯を彩る街路樹の多くはクスノキで、アメリカデイゴは交差点の前後に数本ずつ植えられている感じです。

葵町線を鶴舞公園前から北上したところ、アメリカデイゴの始まりはここ「名大病院西」交差点のようです。
上の写真は歩道側から撮ったものなので、中央分離帯までは少し距離が遠く、「花が咲いてる〜!」という感じではありませんが、ところどころ葉っぱの先に見える赤い点々が花です。

名前のない交差点の横断歩道から見た中央分離帯のアメリカデイゴ
こちらは横断歩道を渡りながら撮影したものです。
前の写真より中央分離帯に近づいて撮っているので、赤い花が咲いているのがわかります。

ここまで近づくと、南国の雰囲気を漂わせた、色鮮やかな花の様子がよくわかります。
散策していたら、もっとじっくりとアメリカデイゴを鑑賞できるポイントを見つけましたよ。
「千早」交差点を北西に進んで一つ目の信号のある交差点に歩道橋があるのですが、そのすぐ脇(西側)に「老松街園(おいまつがいえん)」という小さなスペースがあり、そこにもアメリカデイゴが3本植えられているのです。

ネーミングライツによって歩道橋に愛称がついていますが、地図上では老松歩道橋と記されていることが多いようです。
少し見切れていますが、階段の左側にアメリカデイゴの木が見えます。

西側から「老松街園」を見たところ。
手前のアメリカデイゴの木のすぐ向こう側に歩道橋があります。
ここでじっくりとアメリカデイゴを鑑賞してみましょう。
南国の雰囲気漂う鮮やかな色合いの花

歩道橋を上りきったところから見下ろしているので、大体6.5メートルぐらいのところから見た感じでしょうか。
感覚的に、樹高は5メートル前後といったところだと思います。
中央分離帯のアメリカデイゴより生育状況が良いようです。

すぐ横に歩道橋の階段があるので、色々な高さから花を鑑賞できて楽しいです。

図鑑などで調べてみると、アメリカデイゴは南米産のマメ科デイゴ属の落葉樹で、樹高は5〜7メートル、開花期は6~9月とのこと。
花の色は真っ赤だし、花びらの大きさも7~8センチあって少し派手な感じがしますが、花の形は「蝶形花」といわれるマメ科植物の花の特徴を備えています。
別名でカイコウズ(海紅豆)とも呼ばれ、鹿児島県の県花に選定されているほか、
スペイン語では「セイボ」といい、ウルグアイとアルゼンチンの国花になっているそうです。

開花期が長くすでに後半に入っているため、たくさんの花が落ちていましたが、次から次へと花を咲かせるので、8月下旬でも、まだたくさんのつぼみが付いていました。

上から見ると、花はあまり見えず、鮮やかなライトグリーンの葉っぱが目立ちます。

先に述べたように、かつて「デイゴの道」は北進して東区に続いていましたが、今では東区側に樹影はほとんどなく、上の写真のように、大人の腰の高さほどの株がちらほらと顔を見せている程度です。
こうした小さな株がまた大きく育ってくれることを期待したいと思います。
葵町線のアメリカデイゴは、開花期であっても、車で通り過ぎるだけではなかなか気づけません。
そして、中央分離帯にあるため、歩道から視認するのも結構難易度が高いといえます。
とはいえ、名古屋市内に数ある街路樹の中で、南国の雰囲気が味わえるこの真っ赤な花が植えられているのはここだけですので、区間内の横断歩道や歩道橋を渡る機会があれば、ふと思い出して鑑賞してみてほしい存在です。
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