かつて、市街地の急速な発展によって「白い街」とも呼ばれた名古屋ですが、道路整備に合わせて街路樹の植栽に注力し、今では、市域における街路樹密度が全国の大都市でトップクラスにまでなりました。
2021年からは、街路樹の大木化や老朽化といった課題を解決し整備を進める「街路樹再生なごやプラン」も始まり、道路空間と調和した街路樹づくりが進められています。
「名古屋の街路樹」では、名古屋市内の、街路樹と街並みが調和した特徴的な風景を取り上げ、その魅力をご紹介していきます。

※徳川園から名鉄瀬戸線までは市道・東大曽根新出来町2号線、名鉄瀬戸線から北部分は市道・大曽根町南北7号線
「東区の木」であり 区内の街路樹でよく見かけるハクモクレン
3月後半から温暖な気候が続き、あちらこちらで春の花が一斉に咲き始めました。
今回は、東区の木で、街路樹としても数多く植えられているモクレン(ハクモクレン)を見に出かけてきました。
※東区のホームページでは区の花を「モクレン」とし、ハクモクレンとシモクレン両方の紹介がされています。また、「東区役所正面玄関横、建中寺公園、徳川園周辺など随所で見ることができます」とあり、今回取り上げた道以外でも、あちらこちらで見かけることができます。
※本記事中の写真は全て2025年3月22日に撮影したものです。

かなり大きなハクモクレンの木が何本かそびえていて、ちょうど咲きかけているところでした。
ハクモクレンはモクレン科の落葉広葉樹で、樹高が10〜15メートルになるとされ、同じくモクレン科で紫色の花を咲かせるシモクレン(樹高2〜5メートル)と比べて背の高い木が多いようです。
花も直径10〜16センチほどと大きく、全体的にダイナミックな雰囲気です。

車道両側の歩道に、数メートルおきに植えられていて、通行する自転車や徒歩の人たちが、ときどき立ち止まって見上げながら鑑賞していました。

徳川園の趣ある外塀に、背の高い木と白い花がよく映えます。

徳川園西側の道は、南に行くにつれて上り坂になっているので、上りきったところから振り返ると、ハクモクレンの道を見下ろす形になります。

日当たりの加減でしょうか、この辺りは早々に満開になっていました。
さまざまな表情のハクモクレン

みんなで枝にとまってさえずっている小鳥の群れにも見えます。

外側の花びらから少しずつ開いていっている状態ですね。

ハクモクレンは上を向いて咲く花とされ、下から見上げているこの角度では、見えるのは花の裏側ばかり。
遠近法で上の方の花がだいぶ小さく見えます。

珍しく低いところで咲いていた花があったので、パチリ。
左の花は咲いたばかりでオシベのヤクがまだ開いていないようで花粉が見えませんが、右の花はヤクが開いて花粉がむき出しになっている様子がわかります。

3枚ずつ3層になっているのがわかるでしょうか。
ハクモクレンの花びらは9枚、花姿がよく似たコブシの花びらは6枚とされています。
本当はどちらも花びらは6枚なのですが、ハクモクレンの一番外(下)側の3枚はガクなのに花びらと同じ形状であるため、花びらが9枚に見えるということだそうです(コブシのガクは褐色で小さい)。
ほかに、ハクモクレンとコブシの花の違いとしては、大きさ(ハクモクレンが大きく、コブシは小さめ)や花の咲く向き(ハクモクレンは上向き、コブシはバラバラ)などが挙げられますが、例外などもある(ハクモクレンでも小さめの花や、枝の向きによって真上を向いていない花もある)ので、判別方法としては、花びらの数を確認するというのが確実だと思います。

開花中のハクモクレンの木の根元には、このような包葉がたくさん落ちていました。
冬の間、寒さから花芽を守っていた毛皮です。
「こんなにきれいな花の芽を守ってくれて、ありがとう」と胸の中で手を合わせました。
後日談です。
前述のように、本記事中の写真は全て2025年3月22日に撮影したものですが、つぼみもたくさんあったからまだ花が咲いているのではと思って1週間後に再訪したら、ほとんどの花が散ってしまった後でした。
つくづく、気温の変動や風の強さなどに大きく影響を受ける春の花は見ごろをとらえるのが難しいものだなと感じました。
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