日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。
そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

とがったお尻がトレードマーク 豊橋市発祥のハウス栽培用トマト
本来トマトは夏野菜に分類されますが、今ではハウス栽培が主流になり、年中出回るようになりました。
そんなハウス栽培トマトの中でも、冬~春に旬を迎えるトマトがあります。
あいちの伝統野菜にも選定されている「ファーストトマト」です。
ファーストトマトの発祥地は、愛知県豊橋市。
昭和初期に豊橋温室園芸農業協同組合で育成されたといわれ、昭和後半までは多く作られていましたが、栽培に手間がかかるのと、皮が薄く傷みやすいことから、品種改良された丸玉トマトが普及し、生産者が減少してしまったといいます。
しかし、それらは裏返せば、皮が薄いため食べやすいということです。また、果肉が厚く、種まわりのゼリー部分が少ないため、料理する立場としてはとても扱いやすい食材でもあります。
「甘~い」という食味ではありませんが、ほのかな酸味と甘みには根強い人気があるようです。
食材に甘みややわらかさが追求される時代ですが、食べやすくさっぱりとした味わいのファーストトマトの魅力を実証してみたいと思います。

果肉が厚く、みずみずしいのに種まわりのゼリー部分が少ないのがよくわかります。

お尻がとがっているのに加えて、ヘタの部分を取り除いているので、綺麗なハート型に見えます。
家族や恋人にちょっとした「ラブ」を伝えたいときに付け合わせに加えてみたりすると、案外好評だと思いますよ。
皮が薄くさっぱりした味わい 調理しやすく、食べやすいファーストトマト
ファーストトマトは皮が薄く、果肉がしっかりしているため、比較的包丁で切りやすい感覚を持つ人が多いのでは(皮が厚く果肉がやわらかいと切りにくいですよね)。
加熱調理もいいですが、できれば生食でどんどん使っていきたい食材です。

「北海道ではトマトにさとうをかけて食べる人が多くて、それが美味しいらしい」という情報を聞いて、やってみました。
口に入れるまでは「本当に美味しくなるのか」半信半疑でしたが、食べてみた感想は「なにこれ!完全にスイーツじゃん」でした。
個人的には、イチゴに匹敵する美味しさを感じました。
縦に半分に切ってから薄切りにしてみたのですが、薄ければ薄いほど、さとうがよく絡んでスイーツ感が増す気がします。

果肉がしっかりしていて種まわりのゼリー部分が少ないファーストトマトは、スライスしてもグズグズになりにくく、サンドイッチの具に使いやすいです。
ほかの具材は歯応えのいいキュウリと塩気のあるベーコン、まろやかなチーズが合うと思います。
ファーストトマトのほどよい甘みと酸味、適度なみずみずしさが、全体をうまくまとめてくれます。
個人的にバゲットが合うとは思いますが、どんなパンでもいいと思います。
栽培に手間がかかることと、傷みやすいことで、生産者が減少しているという事情はありますが、ほのかな酸味と甘みに根強い人気があり、近年はその味わいが見直されているというファーストトマト。
生産量を維持していってもらうためにも、どんどん使いたい食材です。
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